第171話「いい加減はっきりさせたい2」

「森とほこらに比べると遠いので、ダンジョン探索するためには休みを利用する必要があるか」


「ええ。会長たちの報告で学園がどう動くかわかりませんが」


 俺の言葉に応じた蛍は、少し意味ありげな言い方をする。


 学園が休みになるなら、その隙を利用して──というプランを彼女は練ったのだろう。


 俺も同じ考えだった。


 あくまでもガルヴァたちの捜索がメインだから、必ずしもダンジョンの中に入る必要はない。


「ヘレヘレ森丘の近くはハイキングに行ったとしてもおかしくないポイントもあるからな」


 と言うと蛍はにこりとする。


「ギリギリのラインでしょうけど、学園に対する言い訳としては充分ですよね」


 彼女もけっこう腹黒いことを考えるんだよな。


 初日、一年なのにダンジョン探索やろうとしていたことを思えば、別に意外じゃないか。


「ああ。それでいこう。今日のところはひとまず解散か」


「解散ですか?」


 俺の言葉を聞いた蛍は意外そうに小首をかしげる。

 この後もダンジョンに入ると思っていたんだろうか。


「そりゃ準備をしたほうがいいからな」


「なるほど」


 敵の戦力がわからないうえに味方戦力は蛍だけとなると、ポーションのたぐいを用意しておいたほうがいいだろう。


 探知系アイテムも作れたらいいんだけどなぁ……作るための素材を集めるためにはダンジョンに入らなきゃ行けない。


 いい迷惑だよ、まったく。

 錬成釜のところに行って回復ポーションと、支援用ポーションを何本か作る。


 できれば使わなければいい状況だとありがたいが、何が起こっているのか分からないからなぁ……いい加減はっきりさせたい。


 今回はっきりさせられたら、たとえ黒幕を撃破できなくても俺の勝ちにしてしまっていいだろう。


 うん、そう決めた。

 錬成を終えたので部屋に戻り、英気を養うことにする。


 いろいろと俺の計画を狂わせられてしまったが、反撃パートを開始するとしよう。


 朝起きてご飯に行くと普段は使われていない掲示板の前に人だかりができていた。


 ゲームの時だと学園からのお知らせを貼られていたはずだから、ほこらの件で何かあったのかと思って見に行く。


 ……残念ながら立ち入り禁止と、五日間学園の臨時休校を知らせるものだった。


 五日間も休むところを見ると本格的に調査チームが編成され、派遣されることは確定と考えていいだろう。


 ゲームでのイベントだとシェラは選ばれる場合と選ばれない場合があったが、フィーネは確実に選ばれる側だった。


 もちろん解決するのが一番なんだが、難しいとみている。


 ガルヴァは主人公が学園を卒業した後にもシナリオに絡んでくる敵キャラクターだからだ。


 原作キャラがシナリオキャラを、退場前に倒すのは難しいんじゃないのかというのが俺の予想だ。


 原作とはけっこう変わってきているので、倒せる可能性だってあるかもしれないが、決めつけることはできないと思う。


 俺は俺で動くべきだな。

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