第168話「危険で非効率なのはNG」
俺たちは帰還してフィーネたちが学園に報告へと向かった。
それは当然だとして、ここから俺たちが強くなっていくためには戦略の見直しが必要だろう。
「食堂に行ってジュースでも飲みながら、今後のことについて相談しよう」
と俺が提案すると全員がうなずいた。
今日はもう疲れている……なんて答えが返ってこなくて安心する。
みんなが危機感を共有できているようで話が早くてありがたい。
食堂に行って蛍はグリーンティー、他の面子は紅茶を注文する。
「やれやれだな」
とウルスラがため息をついた。
弱音をあまり吐かない性格の彼女でも、さすがにもやっとしているらしい。
「面倒な事態になりそうですね」
蛍が笑みを消して言う。
「同感だ」
アインが同意する。
「学園の外のダンジョンにモンスター増殖の工作が仕掛けられているなら、事態が解決するまで俺たち一年は学園の外を探索できなくなりそうだ」
俺がずばり懸念事項を言葉にして出した。
「そりゃ困るよなー。ボクらどうやって経験を積んでレベルをあげればいいんだ?」
ウルスラがうんざりした顔になる。
根本的な問題がそれなんだよなぁ。
今回の敵がイベントキャラだったりしたら、すぐには倒せない可能性すら検討しなきゃいけない。
……すでに原作シナリオからズレはじめているなら、こっちも遠慮しなくていいかもしれない、なんて過激なアイデアも浮かび始めている。
もっともこっちのリスクも出るんで、仲間を誘うのは難しいか。
「エースケ、どうするんだ? 何かいいアイデアはあるの?」
ウルスラに聞かれ、みんなの視線が俺に集まっていることに気づく。
頼られるのは気持ちいいと思うか、俺に丸投げするなと反発するか、人によって感じ方が別れるところだろう。
俺ははっきり言うと前者だ。
誰にも相手にされない、意見を言ってもまともに聞いてもらえない状況よりも、こうやって頼りにされるほうが数百億倍もいい。
「ひとまず学園のダンジョンで地道にレベル上げかな。敵の情報がわからないうちは無茶もできないからね」
とりあえず正論を言っておく。
「そりゃまーそうだろうけど」
ウルスラはもやもやしているのを隠しきれてない顔になる。
もうちょっと自分たちにもできることがあるんじゃないかと言いたそうだ。
「今は無茶をする段階じゃないよ」
一応くぎを刺しておこう。
「そうだな」
ウルスラはしぶしぶ納得する。
その隣でアインはホッとしていた。
俺の本心を知ったらたぶんウルスラは激怒するだろうし、アインは悲しむだろう。
だけど、現段階だとウルスラとアインは戦力として外したほうがいい。
本当は俺も戦力外なんだが、俺がいないと超えられるか分からない点がある。
何とかして蛍と二人きりになって彼女だけを説得したい。
「あーあ。今日のところは解散するか」
やる気を失くしたらしいウルスラがそう言うとアインが賛成する。
「仕方ないね。今日は疲れたし」
「いいのかよ、エースケ?」
ウルスラの問いにうなずくと彼女はコップを持って立ち上がった。
「じゃあ女子寮に帰るわ。また明日な」
「あ、待って。送っていくよ」
アインがあわてて立って彼女の後を追いかける。
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