第154話「『水蛇のほこら』への道」
そして三日後の放課後、俺はパーティーの仲間たちと一緒に生徒会室の前に赴くと、シェラ先輩がドアの外で立っていた。
「お待たせしました」
てっきり俺たちが待つことになると思っていたので少し焦る。
「気にしなくてもいい。たまたま予定より早く来れただけだから」
柔らかく微笑む姿はかなり可愛く、メインヒロインに昇格を望むプレイヤーが多かったのも納得だ。
「改めてごあいさつさせていただきます」
とアインが最初にシェラに声をかける。
そして蛍、ウルスラと自己紹介をしていった。
「シェラ・ロングフォード。キミたちが無茶しないためのお目付け役よ」
シェラははっきりと言い放つ。
「まあどうせそんなことだろうと、エースケが予想してたし」
ウルスラがあっけらかんと受け入れる。
「先輩の目があれば安心というものですね」
蛍は礼儀正しく答えた。
彼女たちの反応にシェラはうすく笑う。
「やっぱりキミたちは変わっているね。普通、いやそうな顔をするところなのに」
「いえ、僕たちはまだ弱いですから。お目付け役が必要なのは当然です」
アインが苦笑気味に応じる。
「ふむ。キミの影響なのかな? シジマくん」
「それはないと思います。みんな元々こんな感じですよ」
シェラの考えは誤解だと否定しておく。
これは謙遜じゃなくてただの事実だ。
俺と波長が合わないならたとえメインキャラクターでも、パーティーを組み続けるつもりはなかったけどな。
みんな波長が合うようで今のところ上手くいっているのは何よりだ。
「まあよく知らねー奴にわざわざ合わせてやる義理なんてねーもんな」
ウルスラが笑う。
「違いない」
俺は肯定しておく。
アインや蛍は性格的にこういうことはハッキリと言わないだろうからな。
「いいパーティーみたいね」
シェラは微笑ましそうな顔になっている。
今は褒められるようなことがあったっけと思ったが、ここは喜んでおこう。
「ありがとうございます。先輩に気に入っていただければいいんですが」
「それは少し気が早いかな。ダンジョン内での動きを見るとか、いろいろやることがあるもの」
シェラはアプローチをやんわりとかわす。
この程度で怯んでいたらこの大物は口説き落とせないけど、いきなりガツガツいっても逆効果だろうから、ここらで自重しよう。
「そうですね。失礼しました」
未練がましいところは出さず、きっぱり諦めたという態度をとる。
シェラは少しだけ目を細めた。
どうやらこういう切り替えの早い態度がお好みらしいな。
「先輩がいらっしゃるのでさっそく『水蛇のほこら』へと向かいたいのですが」
「どれくらい準備をしてるのか聞いておきたいね」
俺の言葉にシェラはそう答える。
まさか準備していないとは言わさないと目で言ってる節すらあった。
「回復ポーション、解毒ポーション、保温剤などをそろえています」
道具袋からいくつか取り出して見せる。
「すごいね。一年生がここまで用意するなんて、錬金術師がいないとまず無理だね」
シェラは目を丸くして口に手を当てたので、相当に驚いたらしい。
「うん、合格。それも予想以上だよ」
一つの関門をクリアしたと思っていいのかな。
「準備が足りてないなら必要なものをそろえるまでもぐるの禁止って言おうと思っていたんだけど、余計な心配だったね」
シェラがニコリとする。
「エースケはその辺ぬかりねーよな。頼もしいを通り越すレベルでよ」
ウルスラが褒めてくれた。
「エースケ殿に任せてしまうようで心苦しいのですが」
なんて言ったのは蛍だ。
「いやいや、蛍は戦闘で大活躍だろ」
思わずツッコミを入れてしまう。
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