第152話「いろいろと考えた結果」
授業が終わった休み時間、とりあえず錬成部に行って錬成に時間を費やす。
まとまった時間をレベル上げに使うなら、短い休み時間は錬成のレベル上げに使ったほうがいい。
昼休み、仲間たちと食堂で一緒に飯を食いながらそう話す。
「なるほどな。エースケが錬成やったらレベルあげになるし、ボクらの準備にもなってお得だもんな」
ウルスラは納得したらしく、鶏肉を頬張りながら何度もうなずいた。
「じゃあ僕らもその間何かしておきたいよね」
とアインが言うと蛍が提案する。
「ではそれがしと模擬戦をしましょう。二対一でやっていれば戦闘の勘を養うこともできるでしょう」
「いいなー、それ。風連坂と模擬戦をやれりゃあいやでも鍛えられそうだ」
ウルスラが目を輝かせて乗り気な姿勢を示す。
「反対はしないけど、風連坂さんは大丈夫? トレーニングになる?」
とアインがちょっと不安そうな顔で聞いた。
力の差がある以上蛍にはメリットがないんじゃないかと心配するのは理解できる。
「復習にはなりますね」
蛍は言葉を選んで答えた。
成長につながるかはさておき、メリットが皆無というわけじゃない。
そんなことを言いたいのだろう。
「まあ復習は大切だよな」
と俺は彼女に賛成しておく。
「わかった」
アインは小さくうなずいた。
何もないよりはましだと判断したのだろう。
「で、エースケは先輩を正式メンバーに引き込もうって考えてんのか?」
ウルスラが問いを振ってくる。
「まあな。簡単にはいかないだろうけど」
そう答えた。
シェラは生徒会の仕事もあるしとっつきにくい性格もあって、正式に加入してもらうのは簡単じゃない。
仮の加入も思ったよりは早くて驚いたし、案外チャンスはあるかもしれないとは思っているが。
「別にケチをつける気はねーけど、ロングフォード先輩って後衛でいいのか?」
「そうだぞ」
メインヒロインじゃないので火力はちょっと落ちるが、それでも十分強い。
「うちの編成の欠点を補ってくれる人だろ?」
「そうだな」
三人ともうなずく。
蛍(サムライ)、ウルスラ(ローグ)、アイン(戦士)、そして俺(錬金術師)という偏りまくってるのが現状だからな。
蛍が強すぎるので今のところピンチになってないが、放置していてもいい問題じゃない。
敵が動き出してるんならなおさらだ。
主人公と恋愛フラグが立つのが加入条件になってるキャラはあきらめるか、アインに勧誘を頑張ってもらう必要があるかもしれない。
シェラ、フィーネ、錬金術師ヒロインは違うので俺が勧誘する形でも大丈夫だろう。
蛍とウルスラが大丈夫だったという前例があるのが心強い。
「臨時とはいえ蛍の負担が軽くなるのは大きい」
「それがしはまだまだ平気ですが」
蛍が遠慮がちに手をあげながら発言する。
頼ってくれていいと言いたそうだが、俺の考えは違っていた。
「まだまだ大丈夫なうちに手を打っておきたいんだよ」
「そういうことでしたら」
とりあえず蛍は納得してくれたらしい。
錬金術ヒロインはまだ入学してないはずだが、ヒーラーヒロインはもういるはず。
問題はどうやって接点を持つかだ。
だってヒーラーヒロインはたしか錬金術師が嫌いって隠し設定だったからな。
錬金術ヒロインとヒーラーヒロインは同時に仲間にできない排他関係にあり、制限を解除するためには両方の個別エンドを見る必要があった。
ゲームの時はそれでよかったが、この世界だとどうやればいいのかって話である。
フィーネが入ってくれるなら別にヒーラーいらないんじゃねってことになるが、今のところ手ごたえがシェラほどないしなぁ。
入ってもらえないことを考えるとヒーラーをどうするかって点は無視できなくなる。
「エースケ、どうしたの?」
アインが急に黙って考え込んだ俺に聞いてきた。
蛍はこういう時あまり踏み込んでこない……ウルスラが今回踏み込んでこなかったのは意外だが。
「ああ。残りはヒーラーだなと思って。誰か知り合いにいる?」
「ヒーラーか……」
ウルスラは頭の後ろで手を組んで椅子の背もたれを軋ませる。
「僕にはいないなあ」
アインが残念そうに言う。
「それがしには一人心当たりがありますが」
蛍はおそるおそる言ったので、俺は誰のことかピンとくる。
「誰のこと? 何年生?」
現段階で知ってるのは絶対おかしいのでとぼけて聞いてみた。
「残念ながらこの学園の生徒じゃありません。故郷の学校に通ってる友人です」
やっぱり光山皐月(みつやまさつき)のことか。
シャーマンと呼ばれる特殊職で回復以外にも薙刀や弓で戦うこともできる。
言ってみればフィーネのように複数の役割をこなせる職業だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます