第151話「生徒会との交渉②」
「……あまり無茶はしないようにね」
俺の表情から内心を読んだのか、シェラはそんな風にくぎを刺してくる。
「ええ。先輩の許可が出る範囲だけにしておきますよ。まだ死にたくはないですし」
そう答えておく。
今はまだ死のリスクをとりに行く状況でもないからな。
シェラに危険視されて行動を制限されてはかえって遠回りになってしまう。
「一応、聞いておいてもいいかな? キミがどこのダンジョンに行こうと思っているのかを」
シェラはじっとこっちをのぞき込むように見て言った。
「水蛇のほこらです」
用意していた答えを告げる。
「……あそこは一年生の冬から二年の春に入るところだね」
シェラがちょっと考え込む。
「少し早いと言いたいけど、あなたや風連坂さんなら突破できる可能性はある。絶妙な選択だわ」
とフィーネが褒めてくれる。
「私は反対しないよ。私が一緒に行くならね。会長はどう思いますか?」
「賛成だわ。シェラも同行するなら心配はいらないでしょう」
シェラに聞かれてフィーネは言った。
よし、この二人に賛成してもらえるなら問題はクリアだな。
シェラがいつなら参加できるのかという障害が残っているが。
「ロングフォード先輩はいつなら参加していただけますか? いろいろと仕事があるんじゃないかと思いますが」
「そうだね。会長?」
シェラは自分で答えず、フィーネに判断をあおぐ。
「三日後の放課後ならかまわないわよ。それならひと息つけているでしょう。それまではレベルの高い外のダンジョンには行かないように」
「わかりました」
ここで学校側の言いつけを破る理由もメリットもない。
「じゃあ用件はそれで終わりね?」
「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございました」
ぺこりと頭をさげて退出する。
ドアを閉めて大きく息を吐き出した。
大成功である。
とりあえず仲間たちのところに戻って報告しよう。
三日あるならその間他のダンジョンにもぐってもいいし。
思わず早歩きになってしまう。
シェラがもしも正式に加入してくれるような運びになったら、もう少し難しいダンジョンに挑戦してもいい。
……いや、そのためにはまずは準備が必要だな。
いけないいけない、あんまり一足飛びにやりすぎると蛍くらいしかついてこれない。
急いては事を仕損じるって言うんだから。
はやる自分の心にブレーキをかける。
教室に戻ってきた俺を入り口で待っていた蛍が、こっちを見て口を開いた。
「おや、エースケ殿、上手くいったのですね?」
「わかるのか、蛍」
ずばり言い当てられてさすがに目を丸くしてしまう。
「エースケ殿の表情が心なしか晴れやかなので」
俺、そんなにわかりやすいかな?
思わず頬をペタペタと触ってみる。
うーん、自分じゃまったくわからない。
「ああ。ロングフォード先輩が一時的に協力してくれることになった。詳しくは昼休みに飯でも食いながら話そう」
「かしこまりました」
授業があるし他のみんなの前で話すことでもない。
もっとも俺たちの会話なんて興味なさそうだがな。
森の事件で注目度が上がるかと思っていたら別にそんなこともなかった。
知名度が上がって評判を集めれば仲間を増やしやすいと思っていたんだがな。
だから連れて行ってもらいたかったんだ。
そうそう上手くいくことばかりじゃないってわけか。
例のクソメガネも無事だったみたいだしなぁ。
あんな俺にとって有害そうな不確定要素消えてくれたらありがたかったんだが。
ま、何も絡んでこないならあえてしばらく放置させてもらおう。
人類の敵側が動き出しているなら、あんなやつにかまってる場合じゃない。
主人公のアイン、メインヒロインの蛍とウルスラあたりはともかく、脇役の俺なんかは状況次第で容赦なく死ぬゲームだったからな。
シビアな点は受け継がれていると考えていたほうがいいだろう。
油断はいっさいできない。
ひとまずは授業を真面目に受けることにする。
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