第150話「生徒会との交渉」
次の日、俺はさっそく新しい手を実行に移す。
俺が一人で向かったのは生徒会室である。
「強くなるためにダンジョンに行きたいのですが、現戦力では不安なので同行者がほしいんです」
とフィーネにかけあった。
直訳すればフィーネかシェラ、強い生徒会の先輩についてきてほしいという依頼である。
学校側が危険だと判断して反対するなら、安全を確保できると信頼されているメンバーに同行してもらえばよい。
それが俺のアイデアで計画というほどたいそうなものじゃない。
「なるほど、そうきたの」
フィーネは俺の意図を理解したらしく苦笑する。
「現実的なアイデアだと思います。昨日の今日で思いついたなら大したものでは?」
シェラが賛成するような口ぶりで話した。
彼女が賛成してくれるならとてもありがたい。
フィーネに次ぐ生徒会の二大戦力だからな。
「そうね。本当にこの人一年生なのかしら」
フィーネもシェラの意見を認めて苦笑する。
わりといい感触だった。
本当はもうちょっと苦労するかと思ったんだがな。
もっとも二人ともやるとは言ってないので気をゆるめることはできない。
「残念だけど難しいわね」
と思いきやいきなり断りの一言がフィーネから出る。
「でしょうね」
うなずくと彼女は目を丸くして吹き出す。
「面白いわね。どうしてダメだと思うのか、あなたの意見を聞かせてくれる?」
「いくつか思いつきますが……どうせならまだ未熟な一年より、ある程度経験を積んでる上級生を鍛えたほうがいいから、でしょうか?」
だいたいこんなことだろうと予想して言うと、シェラが拍手をしてくれる。
「お見事。今朝、先生がたがまさに同じことを言っていた。正確には二、三年をまず鍛えようってことだけど」
生徒会役員だけにその場に居合わせたのか。
そんなこと言いそうなのは教頭とかそのへんだろうけど、言い当てないほうがいいよな。
「そこまでわかっていて来た理由は何かしら?」
フィーネは試すように首をかしげて問いかけた。
「ダメでもともとと思いまして」
ここは小細工を弄することなくストレートにぶつかる。
功を奏したのか、彼女はくすっと笑った。
「なるほど、可能性が低いことは覚悟していたわけね」
「いいのでは? 彼らしいです」
シェラが笑いながら俺を擁護してくれる。
「そうね。森の事件で強くならなきゃって思うのは止められないし、シジマくんは足手まといにならなかったし。暴走せずこうしてお願いに来る分別もある。手を貸してもいいわね」
とフィーネは言った。
えっ、まじで?
正直今の段階だときついと思っていたんだが、まさかの前向きな回答だった。
……いや待て、喜ぶのはまだ早い。
俺たちが無茶しないように監視するって意味もあるはずだ。
一年を後回しにするのは未熟だからで、要するに無駄な犠牲を増やさないという理由があるからだ。
「喜ばないのね?」
「いえ、先輩たちが俺たちの手綱をしっかり握るって理由かなと」
気づいてるぞと言ってもフィーネやシェラの機嫌は損ねないだろう。
そう判断してアピールしておく。
案の定二人は面白そうに笑う。
「本当、頭の回転が速い子ね」
フィーネは頼もしいと評価してくれるが、買い被りもいいところだった。
彼女たちのキャラクターを理解しているからこその予測と判断である。
「シェラ、あなたにお願いしようかしら」
「わかりました」
シェラはうなずいてこっちを見て薄く笑う。
おっと、シェラのほうだったか。
「何でもシェラに報告して、許可をとること。それが私が出す条件よ」
「うれしいです。ありがとうございます、会長! よろしくお願いしますロングフォード先輩」
フィーネに礼を言いつつ、シェラにも頭を下げる。
彼女が加入すると相当な戦力だ。
まあ手を出されると俺たちが経験値を稼ぎにくくなってしまうが、おかげで無茶をできるハードルもあがるっていうもの。
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