第141話「予定は未定で」
「エースケ殿、敵の数は三十を超えてそうですが」
隣の蛍に耳打ちされて俺はいろいろと腹を決めた。
「お前ら、乱戦の準備をしてくれ」
仲間たちに指示を出す。
蛍の発言が聞こえてたらしい残り二名はあきらめたようにため息をつく。
「やれやれだぜ」
「先輩たちと一緒なら安心だと思いたかったんだけどね」
ウルスラもアインも修羅場慣れしてるって反応だった。
比較的無茶なことをやってきたのがここで活かされる形になったな。
俺の計算だともっとあとに来るはずだったんだが、予定は未定でファイナルアンサーにしておこう。
「俺が指示出す前からあいつら準備完了してるわけだが」
グレックが情けない声を出す。
しっかりしてくれ、リーダーだろ。
最悪彼から指揮権を奪ったほうがいいのか?
なんて選択が頭にちらつきはじめる。
「いい加減にしなさい!」
ジェシーがいきなりグレックを叱り飛ばす。
「私たちが経験を積むためのイベントでしょ! ある意味絶好のチャンスなのにいつまでうじうじしてるの!」
グレックの背筋が反射的にピンと伸びる。
ジェシーはしっかりものって感じでいいなぁ。
悪いけどグレックよりも頼りになりそうだ。
「すまなかった」
グレックはきりっとした表情になって三年を見る。
「先輩がたの力をお借りします」
「いいだろう」
三年たちはあっさり引き受けた。
「三年生が前、一年が中央、二年が後衛になってほしい」
グレックはそう指示を出す。
最激戦になりそうなところを三年、背後から狙われるというリスクを潰すのを二年か。
悪くない配置だと思うが、俺なら蛍を使うが。
まあ上級生の意地も考慮する必要はあるだろう。
長い目で見るなら、物分かりがよくて頼りになる後輩ポジションにおさまるほうが望ましい。
三人は俺がうなずいたのを見てグレックの指示に従う。
それに気づいたエドワードが苦笑している。
まあ二年に経験を積ませて自信をつけさせるのが本来の目的なのに、自信を奪うような形になってるもんな。
狙ってやってるわけじゃないし、そもそも自衛のためなんで悪く思う必要なんてないけどな!
出てくる虫たちの種類はバラバラなのに統率が取れている。
これはやばいな。
敵の中に『虫使い』か虫モンスターの王族クラスがいるのはほぼ確実だな。
虫使いか虫の王族に率いられた場合にかぎって、数が多いだけの集団が統率された軍隊みたいになる。
てんこ森に虫の王族なんて出現しないはずだから、ありえるとしたら虫使いか?
いや、ありえない展開がすでに起こってるのに、『ありえない』と決めつけるのは危険だな。
どっちが厄介かと言えば王族がいる場合なので、対王族に備えて作戦を練ったほうがいいかもしれない。
二年はもちろん三年もそれどころじゃなさそうだ。
王族は一年だけじゃ本当ならかなりつらい相手なんだが、そうも言ってられそうにない。
「みんな、聞いてくれ」
と低い声で言うと三人はそっと俺を中心に固まる。
「王族か虫使いが敵にいる可能性が出てきた」
「いろんな種類の虫が統率された動きをしてますからね。大いにありえるでしょう」
突拍子もないと笑われる可能性も考慮していたんたが、蛍はあっさりと納得した。
顔つきや口ぶりから察するに同じことを考えていたんだろうな。
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