第138話「フラグを立てたつもりはない②」
「やっぱりとんでもないんだね、エースケって」
「はっ、今さらすぎんだろ」
アインとウルスラの評価はスルーしておこう。
本当にとんでもないのは俺の隣にたたずむサムライガールのほうだろうに。
「とんでもないと思うが、戦力としてはどうなんだ?」
「まったくダメです。他の三人が頼りです」
とグレックに言っておく。
戦闘力を期待されるとたぶん大惨事になってしまう。
「ははは、素直なやつだな。見栄をはらないところも好ましい」
グレックは笑う。
「僕たちもそんな戦力にはなれない気がしますが」
アインが遠慮がちに主張する。
「謙遜はいらん。お前たちが普通じゃないことはそれなりに調べてある」
グレックはにやりと笑った。
彼とジェシーの視線は蛍へと向けられる。
「一番すごいのは彼女らしいな」
蛍はぺこっと頭を下げただけだった。
自分から話そうとしないあたり彼女らしい。
俺たちは仲間で、親しくなったから教えてもらえてると思うべきなんだろう。
「何も言わないあたりやばい感じ。ロングフォードみたい」
とジェシーが評価する。
シェラもそういう感じはたしかにあるな。
強い人は別に口で自分の力を誇示する必要がないもんなぁ。
「この風連坂はメチャクチャ強いですよ」
一応売り込んでみる。
「エースケ殿」
蛍が困った顔で制止した。
「楽しみだな」
先輩たちは笑って受け流す。
実際に戦ってみればわかると判断だろう。
もう一つのチームは離れた位置にいったようだ。
「いつ出発するとかあるんですか?」
「いや、決まっていない。君たちさえよければ今からでも行きたいところだが」
グレックに言われて俺たちは互いの顔を見合わせる。
「別にいいよな?」
「もちろん」
三人とも賛成した。
「頼もしいかぎりだな。今年の一年は」
「たぶんこの四人が例外なだけよ」
グレックが笑うとジェシーが指摘する。
この二人もいいコンビって感じだが。
たぶん例外なのは俺と蛍なんだろうけど、黙っておこう。
「隊列とかはどうしますか?」
「当然お前たちが前だ。お前たちに指示を出していく経験を積むのが俺たちの目的だからな」
確認するとグレックに返される。
「念のために言っておくが、俺が指示してないことは慎んでくれよ」
まあそう言われるのは仕方ないか。
ちらりと俺が蛍を見ると彼女はこくりとうなずく。
考えてみれば最低限の指示であとは自由に蛍に動いてもらってたんだよな。
それに制限がかかった時、はたして俺たちはどうなるんだろうか?
念のため回復系ポーションはたっぷり持ってきてるし、いざとなったら三年も参戦するわけだから、大丈夫だと思いたい。
うん、俺のこの考えがフラグなんてことはあるまい。
てんこ森は虫の数が厄介なだけで、敵のレベル自体は高くないもんな。
「では出発だ」
グレックに言われて先頭がアインと蛍、その次に俺とウルスラ、それから二年という順番で森に入っていく。
てんこ森は一度に三人くらいしか通れない道がいくつもあるんだが、別に三人並ぶ必要はないという判断だ。
ウルスラが前に出たら二列目が薄くなるって理由もあるしな。
要するに俺の護衛というわけだ。
入り口付近は踏みならされた結果歩きやすくなっているが、すぐに石だらけで雑草が伸び放題という状況に変わる。
「敵が多数、どうしましょう?」
最初に言ったのはやっぱり蛍だった。
ウルスラはまだ彼女ほど範囲が広くなく、精度も高くはない。
「位置はわかるのか?」
グレックは驚きから二秒ほどで立ち直り、蛍にたずねる。
「前方と両横、半円状に包囲されてると言って過言ではない状況かと」
「まじかよ」
彼女の返答にグレックがうめくが、気持ちはよくわかった。
入ってそんなに時間が経ってない状況でいきなりそんな展開が起こるようなダンジョンじゃないはずだからな、ここ。
俺だったらさっさと撤退するか、蛍に無双してもらいながらウルスラに警戒を促すけど、グレックはどうするかな?
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