第137話「フラグを立てたつもりはない」
アライアンス当日、集合場所に行くと二十人以上の人が先に来ていた。
まあ俺たちの一チームだけってことはないだろうと思っていたからそれはいい。
問題は謹慎が解けたらしいメガネがこっちをにらんでいることだった。
離れた場所に立っているアインのところに行って、そっと小声でたずねる。
「これってどういう展開?」
「君がわからないんじゃ僕にわかるはずがないよ」
アインは困った顔で返す。
彼が知らないのは無理ないが俺だって何でも知ってるわけじゃないんだが。
そこへ蛍がやってきたのでそっと手招きする。
彼女はすぐに俺に気づいて寄ってきてくれたが、同時にメガネにも気づいたらしい。
「どうして彼が参加しているのでしょう?」
「二人で謎に思っていたところだよ」
彼女の問いに俺が答えてると、ウルスラもやってくる。
彼女は俺とメガネの件を知らないのかワクワクした顔だった。
「楽しみだなー。素材はいっぱい欲しいなー」
彼女に情報共有するのは何か悪い気がする。
ためらっているところへリプレとエドワードが、先輩たちを連れてやってきた。
「よお、今日はこのメンバーで行くぞ」
エドワードはそう言っただけで後ろに下がってしまう。
リプレは微笑を浮かべて立っているだけで何も言わない。
かわりに青い髪をスポーツ刈りのように短くした男子と、赤い髪の女子が前に出る。
「二年のグレックだ。今日は俺がリーダーを、このジェシーが副リーダーを務める」
さてはリプレ、上手いこと面倒から逃げたな。
そう直感したものの、表情には出さないように努める。
「よろしくお願いしまーす」
できるだけ明るく話しかけた。
「ああ、ある程度のことはリプレから聞いている。風連坂がサムライ、ノヴァクがローグ、ゴリアテが戦士、シジマが錬金術師だとか」
「そうです」
三人とも答える気はなさそうなので、俺が代表してグレックと会話する。
「錬金術師が三人もいるなんて大変ですね」
と同情して見せると、
「軽く情報を集めたかぎりだとお前ら一年は全員規格外っぽいけどな」
苦笑を返された。
「錬金術師だからできることも多いでしょ? 期待してるわよ」
ジェシーにそんなことを言われる。
サボったらだめだろうなと思わされる表情だった。
上級生とのツテを増やすためにはさぼれないわけだが。
こっちをにらんでくるメガネは別の先輩たちがやってきて連れて行った。
そりゃそうだろうと思ったもののやっぱり安心できた。
「じゃあまず虫対策をするわけだが……」
グレックが言ったのでそっと虫よけのポーションを取り出す。
「おっ? 中級道具袋か? 一年が?」
グレックとジェシーが目を丸くする。
「とんでもない一年がいるってリプレが言ってたけど、本当だったのね」
ジェシーはそう言った。
さすがに情報交換をしていないはずがなかったか。
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