第131話「そろそろ」

「虫よけを作ってたら錬成スキルレベルがⅣになった」


 とつぶやく。

 何を言ってるのかわからないかもしれないが、俺もちょっと頭を整理したい。

 

「おお、すごいじゃないか」


「おめでとう」


 エドワードとリプレが拍手をして称えてくれる。

 

「ありがとうございます」


「とんでもない快挙だぞ」


 とエドワードが熱く語った。

 その通りなんだが、いい意味で計算違いである。


 今まで気づいてなかったが、スキルレベルはこっちの世界のほうがあがりやすいと思ったほうがよさそうだな。


 そうなると数年後にと思っていた計画を前倒しにできるかもしれない。

 これだとアインとウルスラの強化もはかどるな。


 あんまりやりすぎると、錬金術ヒロインの出番を根こそぎ奪ってしまうことになりかねないわけだが……。


 あのキャラは普通にハイスペックだから今のうちにアドバンテージを作っておくということで、自分自身を納得させる。


「これで作れるもの増えたんですかね。まあ素材が足りませんが」


 と先輩たちの手前笑っておく。


「スキルレベルのアップ速度にいろいろと追いついてないのか」


「普通は逆なんだけどね。シジマくんすごすぎ」


 二人はうなっている。

 怪しまれなかったようで何よりだ。

 

「このまま虫よけを作っていくのか?」


「せっかくだからポーションにも手を広げようと思います」


 エドワードの問いに答える。

 スキルレベルがⅢのままだったら迷ったけど、Ⅳになったら迷う理由はない。


 アライアンスまでまだ四日あるしなぁ。

 何か作ってもいいんだけど、アライアンスのあとにしてしまってもいいだろう。


 短期間のうちに目的がとっ散らかるのはあんまりよくないからな。

 俺の脳のスペックはそんなによくないし。


 目先のことは一つずつ片づけていく感じでちょうどいいだろう。

 とりあえず夕食の時にパーティーメンバーで集まり、そこで報告をしておく。


「え、スキルレベルがⅣにあがったの?」


「すっげーな。尋常じゃねーよ」


 アインは目を丸くし、ウルスラは声を低くしてうなる。


「すばらしいですね。お見事です」


 左隣に座った蛍が拍手をして喜んでくれた。

 その笑顔を見てるとふと疑問がわく。


 いい流れだしせっかくだから聞いてみようか。


「参考までに聞きたいんだが、蛍のスキルレベルってどれくらいなんだ?」


 一回は聞いておきたかったんだよな。

 持ってるのは刀剣戦闘と気配探知の二つだと思うが。


「隠すことでもないですね。刀剣戦闘がⅦ、気配探知がⅥです」


 蛍はさらりとトンデモな内容を返す。


「……は?」


 ウルスラは間抜けな声を出し、アインは絶句してしまってる。

 スキルレベルがⅦっていうのは対魔王戦争の終盤に差しかかった時のメインキャラのレベルだ。

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