第129話「まねされると生徒会が困る」
「レシピに書いてある素材、どこで採れるかわかるか?」
とエドワードに聞かれる。
知ってるけど即答はあまりよろしくないだろう。
少し考え、悩み、思い出す感じで答える。
「『ユーカの葉』と『アザネの実』は地下洞窟の第三階層、『クルルックの肝』は第四階層でしたか?」
「そうだ。優秀だな」
エドワードは笑顔で褒めてくれた。
まあ半分インチキみたいなもんだが。
そのうちこっちの世界でもしっかり調べる習慣を作っておいたほうがいいかな?
蛍とそのへん一回くらいは相談してみようか。
「お前たちなら自力で集められるだろうと判断した」
「なるほど」
自力で集められないんじゃレシピを教える意味はうすいもんな。
とってきてくれる知り合いがいるなら別だが、報酬を用意する必要がある。
「出発は一週間後だから何とかできるだろう?」
エドワードは試すような視線を向けてきた。
「難しそうだったら相談させてもらってもいいですか?」
「もちろんだ」
探るような問いを返すと楽しそうに笑われる。
「さすがだな。普通のやつなら気負ってから回りするところだが」
「一年を試すなんて性格が悪いですよ」
といつの間にか来ていたリプレがドアを閉めながら言う。
「すまん、有望な相手だからついな」
エドワードは反省して頬をかく。
「気にしてません。鍛えてもらってうれしいです」
別にそんな気持ちはないが、馬鹿正直に言う必要はない。
それが処世術ってやつである。
「ハハハ、ずいぶんとできた後輩を持てたものだ」
エドワードは愉快そうに腹を抱えて笑った。
「シジマくん、本当に一年生?」
リプレは疑うような目をする。
如才なく立ち回りすぎてるのか……?
そんな上手いことやれてるかな?
「やだなぁ、れっきとした一年生ですよ」
正確に言うと中身は違うんだがな。
もちろん言えるはずもない。
「そりゃ当然だろ。年齢詐称なんてものが学園が気づかないわけがない」
エドワードはきっぱりと言った。
詳しいことはわからないが、そのへんの調査能力はすごいらしいという情報はどこかで見た記憶は俺にもある。
まあロングフォードとかグルンヴァルトといった家の令嬢がいるくらいだからな。
例のメガネは何でまぎれこめたんだって話ではあるが、どっかのおぼっちゃんだったのかもしれない。
「そうですけど、そこでそんなこと言っちゃうエドワード先輩は女子的にはマイナス百点ですね」
「ひど!?」
いきなり採点されてマイナスを突きつけられたエドワードは、ぎょっとしている。
リプレのほうはむすっとしたままそっぽを向く。
俺には関係ないから放置しておこう。
「じゃあ約束があるので俺はこれで」
右手をさっとあげて立ち去ろうとすると、
「えっ、ここで出ていくってひどくない?」
エドワードにそんなことを言われた。
まあこの状況で二人っきりは俺だったらいやだなーとは思う。
「でも、エドワード先輩が悪いですよね」
口は災いのもとって言葉が作られた理由がよくわかる一幕だった。
「ぐっ」
俺が切り返すと、エドワードは気まずそうに黙ってしまう。
「先輩の負け。かっこわるいですね。シジマくん、行っていいわよ」
今日はちょっと辛らつなリプレが、俺には優しく言ってくれたのでお言葉に甘えることにする。
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