第120話「結局、話は戻る」
「お前、下級とは言えガンガンポーションを作ってるじゃないか」
「シジマくんとパーティーになりたい子、探せば見つかるはずよ?」
そんなことを言われても、ウルスラ以降応募が一人もいないんだが?
シェラに関してはまた評価軸が違うだろうし。
「でも誰も応募してきませんよ?」
と言い返すと、二人にため息をつかれた。
「シジマって自己アピールがヘタクソだよなぁ」
「その辺きっちりやってたら、もっと人は集まったでしょうに。まあそれだと面接が大変になったかもだけど」
あれ、もしかして俺のミスだったのか……!?
その発想はまったくなかったんだが。
いや、おかげで理想的なメンバーになってるんだから結果オーライだ。
来てほしくないやつ、めんどうなやつに絡まれなかったと考えればグッジョブ過去の自分と思える。
「い、いえ、それでよかったんですよ。わずらわしい思いしなかったんだから」
「声ふるえてるぞ」
エドワードの指摘が細かい。
「まあ今後はもうちょっと目立つ実績になるようなものを作りますかね」
なんて言ってみる。
おそらく強がりにしか聞こえないだろうけど、まったくアテがないわけじゃない。
チョコやコーヒーって嗜好品、手付かずなんだもんなぁ。
ただ、どこにあるのか探さないといけないので、結局パーティーの戦力強化に話が戻るのだ。
「お、何かプランでも持ってるのか?」
「ありません」
きっぱりと言い切る。
先輩たちを信じてないわけじゃないが、現段階でぺらぺらしゃべるのは好ましくない。
人の口には戸が立てられないって言うしな。
「何かありそうだけどねー、残念」
リプレはうすうす気づきながらも問い詰める気はないようだった。
「俺たちの手助けが必要なら遠慮なく言うんだぞ?」
エドワードが気遣いを見せてくれる。
「ええ。その時は一部を部費に還元するので手伝ってくださいってお願いするつもりです」
笑いながら応じると、
「ちゃっかりしてやがるな」
エドワードは苦笑した。
「たくまして頼り甲斐がありそうな後輩ですよ」
リプレがフォローをしつつ笑う。
二人とも気がよくて話しやすいので、ダンジョン探索部にしなくてよかったかもしれない。
今日はこれから難しいが、明日は第六階層に行ってみようか。
とりあえずウルスラの装備を整えておいて、それから新しいダンジョンに行くことを検討したい。
鍛錬ダンジョンは素材集めという観点で言えば優先度は低いんだよな。
文字通り練習用のダンジョンにすぎないからだ。
よし、一気に卒業を目指すか。
最初はもっとみんなが慣れてから……なんて思ってたんだが、あのパーティーの感触的にはそんなに気にしなくてもよさそうだ。
あんまり強いとこ行き過ぎるとアインと俺がついていけないだろうから、注意は必要だが。
考えをまとめて日課の錬成を終えると立ち上がる。
「仲間のところに行くの?」
リプレの問いにこくりとうなずいた。
話をするのは早いほうがいいからな。
あいつらどこにいるのか、ちょっと探してみる必要がある。
これまでのパターン的には三人とも鍛錬ダンジョンにいる可能性が高いが。
もしもすぐに会えなかったらソロでもぐればいいし、鍛錬ダンジョンに進めばいいだろう。
もぐるのにすっかり心理的ハードルが低くなってしまった鍛錬ダンジョンの第一階層と第二階層を越え、第三階層に行くと目標の三人と出会えた。
「おっ、エースケじゃん。もうこっちに来てよかったのかよ?」
「ああ。目標は無事に発見できたしな」
ニヤリと笑うと、
「発見されたね。行動パターンはバレバレなのかな」
とアインに言われる。
「俺が探しに行きやすいようにって考慮してくれてるんだろう?」
誰が言い出したのかわからないが、おそらく間違ってないはずだ。
たぶん蛍のアインのどっちかだろうな。
「ご名答。さすがエースケ殿です」
蛍が満面の笑みを浮かべて、それから首をかしげた。
「ところで何かお話でもあるのでしょうか?」
「ああ。今後の予定についてちょっと話しておきたい」
そう言うと、アインも首をひねる。
「それはアライアンスについてじゃないんだね?」
「別だと思ってもらっていいよ」
真剣な顔して言うと三人の表情がひきしまった。
「ダンジョン内でってのもアレだな。別のとこ行こうぜ」
「うん。と言っても食堂だけどな」
ウルスラの案に切り返す。
反対意見は出なかった。
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