第117話「アライアンス」
「アライアンス?」
次の日の昼休み、いつものように集まったメンバーに話を持ち出す。
蛍は「あれか」という顔をし、アインとウルスラは仲良く怪訝そうな反応だった。
「学年ごとにメンバーを出し合って大きなパーティーを作るんだ。一年を育てたり、二、三年はリーダーとしての経験を積むのが目的かな」
基本一年は足手まといになりがちである。
たぶん蛍は例外だろうが、今は置いておく。
「足手まといを抱えながら戦うって経験を積むのが上級生の目的か。まあそうなっちまうか」
ウルスラが仕方ないという顔に若干の不満を込めて言った。
「でしょうね。となると、それがしはおとなしくしておいたほうがいいでしょうか?」
蛍はいたずらっぽく笑う。
彼女に驕りはないものの、普通の一年とは違うという自覚は持っているようで何より。
ここで自分は平凡だって言われたりしたら、説得しなきゃいけなかったからなぁ。
「そういう事情なら僕たちが参加しても迷惑じゃなさそうだね」
アインはほっとしている。
彼のことだから足手まといになるくらいなら参加したくないと思ったのだろうな。
「むしろ足手まといになったほうがいい経験を先輩たちに積んでもらえるって意味で、役に立つかもしれないぞ?」
冗談を言うと、
「いやそれはさすがにちょっと」
真面目なアインは本気で困惑する。
「ハハハ、エースケが言いてーのはそんくらい気楽にやれってことだろーよ」
ウルスラは笑って正面に座る彼の肩をバンバンと叩く。
「あ、そうか」
アインは自分の勘違いに気づいたらしく赤面する。
「まあそこがアインのいいところだが」
融通が利かない、冗談がわからないってわけじゃない。
人の迷惑になりたくないって気持ちが強く、最初にそれが出たってだけだ。
「エースケ殿とはよい組み合わせかもしれませんね」
俺の目の前に座る蛍がクスッと笑って言う。
からかうような色が瞳に浮かんでいたので、乗っかることにする。
「俺たち名コンビかな?」
と言いながらアインの肩に手を回す。
「なれたらいいね」
アインはおだやかに微笑んで俺のまねをした。
「男どうしの友情ってやつかー?」
ウルスラがからかってるのか、それともうらやましがってるのか判断に難しい顔で言う。
「そだよ?」
あえて真顔になって答えを返す。
「くっ……」
ウルスラは顔を伏せて何やら悶絶しはじめる。
「ふっ、勝った」
アインから手を離して勝利宣言した。
「勝ち負けとかあるの、これ?」
隣からあきれた顔でツッコミがくる。
「ねーよと言いたいけど、何か負けた気分になってきたな」
ウルスラは腕組みをして、神妙な顔で言った。
「ウルスラ、それってエースケの術中にはまってるんじゃない?」
「そうだったのか、しまった」
アインに言われてウルスラはハッと顔をあげる。
「もうちょっとだったのに、惜しい」
俺は悪ノリして悔しがって見せた。
「エースケ……」
二人からじとっとした目を向けられる。
黙って肩をすくめて舌を出してごまかす。
蛍は顔を横に向け体を震わせている。
声を殺して笑っているようだ。
「蛍ー、助けてくれ」
と言ってみると、
「相わかりました。貴殿の敵はすべてそれがしが斬り伏せてみせましょう」
キリッとした表情で応えてくれる。
案外ノリノリだった。
「ここで風連坂さんを呼ぶのは反則じゃないかな?」
「やっていいこととわりーことがあんぞ?」
アインとウルスラが一歩引いたような態度をそろってとる。
「蛍だけ仲間外れにしたらかわいそうじゃないか?」
と俺がニヤニヤしながら言えば、
「そうですよ。それがしも混ぜてください」
蛍もニコッと笑いながら続く。
「チクショー、どう切り返したらいいのかわかんねー」
ウルスラは悔しそうに天をあおいだ。
「エースケたちには負けたよ」
アインはあきらめ顔でため息をつく。
「勝った」
俺と蛍は手を叩き合う。
「で、何の話だっけか?」
勝利宣言が出たところでウルスラが話を戻しにかかる。
「アライアンスの話だな。今日先輩にオッケーだと話すから、数日後には編成がはじまるんじゃないかな」
期待に応える言葉を口にした。
言っておいて何だが、編成にどれだけ時間がかかるか俺たちにはわからないのが難点と言えば難点かな。
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