第116話「これって青風の月に起こるのか②」
「わかった。じゃあみんなで得た利益を分配するスタイルでいこう。それならかまわないよな?」
「おう。エースケが話のわかるリーダーで助かったぜ」
ウルスラはニカッと白い歯を見せる。
「へえ、そういうことなんだ」
アインはようやく合点がいったとうなずく。
こういうすり合わせ面倒だからリーダーはいやなんだけど、たしかに俺以外がやると摩擦が増えるかもなぁ……。
ある程度はゲームで見慣れてたけど、現実じゃ上手くいかない可能性があるって考慮すれば俺がやり続けるべきか……。
「じゃあ僕は錬成部の外で待ってようかな。今日は雑用もないし」
「ボクも」
アインとウルスラが去っていく。
「蛍はどうする?」
残る意味はないよと意思を込めて聞いてみる。
「では剣術部に顔を出してまいります」
義理を果たしに行くらしいと彼女の表情を見て察した。
蛍がやりたいのはすべての極意を会得することだろうし、剣術部の活動に参加する意味はあまりないのかもな。
残された俺は一人、錬成を開始する。
こうして思うとアインを錬成部に引っ張り込んだ意味ってあんまりないような気がするな。
他の部で使いつぶされるリスクを避けられただけで満足しておこう。
「シジマくん、また一人で錬成?」
リプレが話しかけてくる。
「ええ。錬成スキルレベルを早めにあげたいんで」
そう考えると彼女はにっこり笑う。
「それだったら難易度の高い素材に挑戦するって手があるわよ」
この返答は予想していた。
「ただ、それって一年だと集めるのは無理じゃないですか?」
蛍が相当頑張らないときついことは知っている。
シェラやフィーネを誘った理由の一つだった。
蛍を入れて三人もいれば楽々達成できると考えたからである。
もっともこの作戦はシェラから出された条件によってあきらめざるを得なくなってしまった。
「おー、シジマくんはいい勘してるね。ただ、やり方次第よ」
リプレは目を丸くしたあと、意味ありげにふふふと笑う。
うん、これは知ってる展開だな。
こっちから頼むよりも持ちかけてくれたほうがいろいろとやりやすいイベントだ。
お礼を兼ねて……と言いたいが、わかってることを上手にとぼける自信がないので気づいたことにしよう。
「もしかして先輩たちと組むとかですか?」
遠慮がちに言ったつもりだったが、リプレはぷーっとふくれっ面になる。
「シジマくん、察しがよすぎてつまらない」
そんなことを言われてもなあ。
もったいぶった話し方をされるのはあんまり好きじゃないんだよな。
「うざい絡み方を後輩にするのはやめておけ」
エドワード先輩が制止してくれたおかげでひと息つける。
「俺たちと共同という形でなら、諸問題をクリアできるぞ。つながりあるメンバーなら参加できるから、風連坂なんかも参戦してもらえる。どうだ?」
エドワードの申し出は願ってもないことだった。
ていうかこれってアライアンスだよなぁ。
一年の青風の月で発生するイベントだったのか、これ。
いや、ゲームとは乖離している部分だと思ったほうがいいかもしれない。
「へえ、それはすごいですね」
我ながらひどい反応だったが、先輩たちは驚きが原因だと思ったらしく怪訝そうにはしなかった。
「ああ。アライアンスって呼ばれるやつなんだけどな。これなら学年を超えてメンバーをそろえることができる。一年にとってはメリットが大きいな」
そりゃな。
二、三年がいれば一年だけじゃ入れない場所にも行けるし、勝てないモンスターも倒せる。
上級生にしてみれば一年に経験を積ませる、将来に投資するという意味合いが強い。
同じ部活の先輩がいないと参加が厳しい理由だ。
アインと蛍を参加させるのに何の障害ないっていうのがいいな。
ウルスラはどうだろうな?
参加してくれるといいんだが。
「詳しい話はまた後日にしよう。とりあえずゴリアテと風連坂の二人には、お前から話をしておいてくれ」
「わかりました」
エドワードの言うことはもっともだったのでうなずいた。
やっぱり俺の口から言うのがいいだろうな。
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