第108話「俺たちの関係はここからだろ?②」
「まだまだエースケ殿のことを知らなかったようです」
何とか届いたのか蛍は反省した。
「当然だ。俺たちの関係はこれからだろ?」
「はい!」
すごいうれしそうな返事がきて、俺のほうだって案外蛍のことを理解しきれていないのではという疑問が浮かぶ。
「とりあえずダンジョンの第一階層に行ってあいつらに合流しよう」
今どこにいるのかわからないので、探しに行くなら早いほうがいいだろう。
「ええ。いい報告ができますね」
蛍の声がはずんでいる。
少しうきうきしているようだった。
珍しく思ったので聞いてみる。
「楽しそうだな。味方が増えるかもしれないからか?」
「ええ。まだ確定したわけではないとわかってはいるのですが、着々と整っていくさまに胸が躍ります」
パーティーが充実していくのを楽しんでるのか。
たしかに戦力がそろっていくのは大きな満足感がある。
もっとも彼女と俺とじゃ多少の違いはありそうだが。
「シェラ先輩が入ってくれたら蛍は楽できるよな。ただ、お前が楽できるほど手伝ってくれない気はしてるけど」
と告げる。
明言はしなかったものの、シェラは自分に頼りきりになるようなパーティーだとさっさと見捨てるだろう。
そのシビアさは当然であって文句を言うのは筋違いなんだが、今の俺たちは大丈夫なんだろうか?
「うん、少し早まったかもしれないな」
なんてつぶやく。
承知してもらえるわけがないと踏んで言ったからこそ、かえってやっかいなことになった可能性から目をそむけちゃいけないと思う。
「……先輩から認められるほどの力、たしかに今の我々には足りていないかもしれませんね」
蛍は俺の言いたいことに気づいたらしい。
「ロングフォード先輩が今の一年の力を知らないなんてことはないと思いたいが」
「そこらは考慮したうえで判断されるのでは?」
と蛍が答えを返す。
「そうでなければ理不尽ですし、仲間として信頼できるのかという気がします」
二人きりだからか、彼女の発言はちょっと過激だった。
一応俺たちもシェラは仲間としてふさわしいのか、審査する資格はあるんだが。
やっぱり彼女は肝が据わってるなと思う。
この強さはまぶしいし見習いたい。
「まあ理不尽な要求をしてくる人は無理に仲間にしなくてもっていうのはわかるよ」
俺はワンクッション置いた。
「ただ、先輩もそれを理解してるからこそあんな条件を出してきたんじゃないかな?」
と彼女に問いかけてみる。
本当なら二年で生徒会役員ということもあり、もう少し条件を出してもいいはずだった。
シェラが分別のない人間ならそうしていただろう。
「言われてみればそうですね」
蛍もそれに気づいたらしく、あっさりうなずいてくれた。
「その分正式メンバーになってもらうのは大変だろうな」
「違いないですね」
二人でどちらともなく笑う。
困難に対して燃えるような性格なのは蛍だと思っていたんだが、この世界に来た影響か俺も多少は変化してるらしい。
ダンジョンの第一階層に赴けばすぐにアインとウルスラを見つけた。
「あれ、戻るところだったのか?」
「ああ、二人だけだし、昼休みだしな」
問いかけるとウルスラが明るく答える。
目的を達成した以上はいても仕方ないので、俺と蛍はそのままUターンだ。
「二人のほうはどうだったの?」
アインに聞かれたので、
「ロングフォード先輩が臨時で来てくれるってさ」
と返事をする。
「ええ!?」
「マジかよ!」
案の定二人も大いに驚いたようだ。
だよな、普通に考えれば望み薄だもんな。
「その分正式メンバーになってもらうのは厳しいかもしれないが」
と俺は二人に言う。
「そりゃそうだろ? 何でまた承知してくれたんだ?」
ウルスラはそう言って首をひねる。
「……エースケのことが気になってるんじゃないかな?」
アインはそう予想を口にした。
「それはないだろう。どっちかと言うと蛍のほうじゃないか?」
俺たちが絶好調なのはだいたい蛍のおかげだからな。
生徒会メンバーとしては気になっていても不思議じゃない。
「えっ?」
蛍、アイン、ウルスラの三人が一斉にハモった。
「エースケ、今のはさすがにギャグだよね?」
アインは驚くんじゃなくて心配そうな顔で聞いてくる。
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