第107話「俺たちの関係はここからだろ?」
どうしよう、シェラからいい返事がもらえるなんて正直思ってなかった。
いや、せっかくのチャンスに何言ってんだ俺。
シェラは臨時加入の結果次第で正式加入が決まるキャラ。
そして強さはメインヒロインと遜色がないレベル。
「条件についてうかがってもいいでしょうか?」
「切り替えが早いね。いいね」
質問するとシェラはうっすらと微笑む。
驚き困惑し、そこから立ち直ったのを見抜かれてる。
「私は現在パーティーを仲間と組んでいて、脱退するつもりはない。つまりキミたちのパーティーの優先度は低いと承知して」
「当然ですね」
シェラがいるパーティーはたしか二年で屈指の強さという設定だった。
現段階でそこから俺たちに乗り換えるメリットなんて彼女にないし、俺も急には用意できない。
そもそも彼女の善意の申し出に厚かましくはなれないな。
「あと、いずれわかると思うけど、上級生が手伝ってはいけないエリアというものが学園側で定められていて、そこにも行けない」
「同学年の力だけでクリアする、要するに試験のたぐいは加勢できないってわけですね」
基本的に上級生ほど強いので、状況によっては反則になってしまうからな。
試験に模範解答が書かれたカンニングペーパーを持ち込むようなものか?
生徒会役員がそんなことに加担できないというのは当然だった。
「そういうこと」
「それでいいならぜひお願いしたいです」
事前に予想していた条件ばかりだったことに安心する。
「まだもう一つあるよ」
ところがシェラはそこで首をふり、ピッと右人差し指を立てた。
「え、何でしょう?」
他に断りを入れらるようなものなんてあったっけ?
「ダメだと思ったら次からは参加しない。いいよね?」
「当然ですね」
何だ、そんなことか。
きつい条件が来たらどうしようかと思ってしまったが、常識の範疇だった。
ゲームの時と同じくぬるい感じである。
もっともゲームの時と同じなら、正式加入のためにはけっこう高いハードルをクリアしなきゃいけなくなるが。
そのつもりでいたほうがよさそうだ。
「それでいいなら加わるよ。よろしく」
「よろしくお願いします」
シェラは微笑み、俺と蛍は頭を下げる。
「ところで今日はどうなんでしょうか?」
さっそくずうずうしく聞いてみた。
「いいわね。放課後なら少しくらい平気でしょう」
シェラはちらりとフィーネを見る。
「かまわないわよ。だいぶ落ち着いたもの」
フィーネは苦笑しながらも許可をくれた。
よし、次のハードルもクリアしたぞと思う。
もっともまだ超えなきゃいけない点は残ってるので油断は禁物だ。
「悪いけど、放課後に生徒会室前まで来てくれる?」
「わかりました」
こっちが勧誘してるんだから多少の譲歩は見せるべきだし、シェラの頼みは条件にしてはゆるすぎる。
二つ返事で了承して生徒会室をあとにした。
「まさか承知してもらえるとはな」
「それがしも意外でした」
黙っていた蛍がぽつりと言って、それからはっきりとした疑問を目に宿してこっちを見つめる。
「エースケ殿は何か勝算がおありだったのでは?」
「いや、全然なかったよ」
俺は否定した。
だってシェラが主人公パーティーに加入するとすれば、それは詠月、日本でいう九月ごろになってからだ。
相当な前倒しに首をかしげたいくらいである。
「そうなのですか?」
蛍は少し意外そうだった。
やっぱりちょっと過大評価されている気がするな。
「ダメでもともとってつもりだったさ。一回断られただけであきらめるつもりがなかっただけで」
これは本心だった。
一回目からこんなに上手くいくはずがないと思っていたからこそ、直近まで考えすらしなかったのだ。
「そうなのですか……?」
蛍はやっぱり怪訝そうである。
「失敗してもいいことなら、ある程度思い切ってやるぞ?」
もしかすると彼女の中じゃ俺はいつだって勝てる戦いしかしない男なのかもしれない。
そう気づいて訂正を試みる。
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