第68話 大した洞察力
「もしかして誰かの試作品とかですか?」
「ええ、そうよ。きちんとした品物は銀貨六枚になるけど、そっちにする?」
高いけどいいやつもちゃんとあったのか。
そこまで考えてふとひらめいた。
「もしかしてお金のない新入生用だったります?」
「そのとおりよ」
リプレは素敵な笑顔を見せる。
「大した洞察力よね」
「すごいね、エースケ。ろくな情報もなかったはずなのによく気づいたね」
アインにも褒められた。
うーん、俺ってもしかして自分の手でハードルをあげてるんじゃないだろうか。
思わず腕組みをして考えてしまう。
「お金に余裕がある人用だとおいくらですか?」
「フィラー銀貨八枚よ」
リプレに即答される。
八千円になったけど、それくらいするだろうなと納得だ。
「そっちにします」
「了解」
即決するとリプレはさっき持ってたのとは別の品物を取り出す。
うん、エースケとして見ればちょっと違うのがわかる。
鑑定スキルはレベルⅠのままなんだが、錬金術師のジョブレベルがあがってるせいで補正がかかったんだろうな。
銀貨を払って品物を受け取ると、リプレは言った。
「間違いなくあなたが一年で一番お金持ちね」
「そうでしょうか?」
自力で稼いだ金額で言えばおそらく俺か蛍だろう。
だが、一年にも一応家が金持ちってキャラクターは複数いる。
サブヒロインだったり、主人公と友達になるやつだったり。
「自分の力で稼いだ金額なら、ね」
リプレも気づいたのか発言を修正する。
「その条件だったら、たしかにそう簡単に負けるとは思いませんね」
そりゃ他にも稼ぐ手段はあるけど、まっとうなものとは言えない。
そもそも普通の一年は存在を知らないだろうし、思いつくことさえできるかあやしいものだ。
「蛍を除けばですが」
「ああ」
リプレもアインも俺の発言にうなずく。
蛍は一人で第三階層に赴いてモンスターを蹴散らせるほどの猛者。
俺が金色の腕輪を渡したおかげで、ドロップ収集効率も上昇中。
一番近しい相手が一番のライバルというわけだ。
「まあ意味のない比較ですが」
大切なのは学園を卒業してからで、今は準備期間と言える。
「サムライと錬金術師じゃライバルにはなりにくいわね」
とリプレは言う。
同感だし、それ以上に蛍をライバル認定するほど俺は無謀じゃない。
「装備を買ったけど、このままダンジョンに行くの?」
というアインの問いに首を横にふる。
「今日はやめておく。錬成もやっておきたいからね」
錬成する素材自体は持ってるのだから、ダンジョンに行かなくてもいいだろう。
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