第67話 部で買える品物
変な方向に話が進みかけたので、無理やりにでも戻そう。
「それで部で買える品物を確認したいんですが、リストはありますか?」
「そんなものないわよ」
思わぬ内容が即座に返ってきて、つい絶句してしまう。
「だって、リストを作ると補充しなきゃいけないでしょ? 私たちは別にお店をやってるわけじゃないんだから」
リプレの主張は一理あるかもな。
在庫がない品物を常時補充しろって言われるのは正直困る。
商売をやっていこうというつもりがあるなら、ダメな思考なんだろうが……。
あくまでも俺たちは錬金術師であって商人じゃないんだよな。
もちろん計算ができたほうがいいに決まってるので、難しいところなんだが。
「そりゃそうですよね」
ここで否定しても何もはじまらない。
共感して、アイテムを見せてもらおう。
「じゃあ何を売ってるのか聞いてもいいですか? 鍛錬ダンジョンの第三階層まで楽に進めるようなものがいいんですが」
「んー」
俺の質問にリプレはうなる。
「希望どおりの装備自体はあるけど、錬金術師用って言えるかというと微妙なのよね」
その回答は予想の範疇にあった。
戦闘向きのジョブと戦闘に向いてないジョブじゃ、同じダンジョンでも突破する難易度が変わる。
「とりあえず噛みつき石と置いて毛対策になる、魔法効果を帯びた武器がいいかなって思うんですが」
他のモンスターにも対応可能のものとなると、かなり厳しいだろう。
「なるほど、一つの目的に絞るわけね」
リプレは俺の狙いを正しく理解した反応を示す。
一つの目的に絞れば装備を探しやすいものだ。
「噛みつき石、置いて毛対策って点も目のつけどころもいいわね。この二つの対抗策は一つでいけるし、探索もやりやすくなるでしょう」
リプレは大きくうなずく。
「さすがの着眼点というか、戦略眼というか」
へえとアインが感心している。
「あるわよ。魔力を帯びた手甲と、魔力シューズがね」
リプレは部屋の奥に行ってすぐに品物を持って戻ってきた。
魔力シューズは魔力を帯びた以外、普通のスニーカーである。
手甲のほうは白色でやはり何の変哲もないものだ。
どちらも物理攻撃を魔法攻撃扱いに変える程度の効果しかない。
グレードの高いやつになれば軽くて丈夫で、より強い魔法効果が期待できるんだが。
「いくらですか?」
「部員割り引きでフィラー銀貨三枚ね」
「あんまり高くないですね」
という正直な感想をはっきりと伝える。
二つで三千円前後とすると、ちょっと品質が不安だな。
「まあね。無茶をしなければ大丈夫だと思うけど、耐久性に関しては過信しないでちょうだいね」
リプレが念を押す。
耐久性に難ありか……ダンジョンという長丁場になる可能性がある場所で使うには不安だな。
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