第50話 メインヒロインに対抗できるのはヒロイン級だけ(大事なルール)
「まずは錬成部から行くぞ」
リーダーシップをとるのは柄じゃないんだが、蛍もアインも俺に任せる気満々なので仕方ない。
錬成部は実習棟じゃなく、部活棟にある。
部活棟は実習棟に続く廊下をまっすぐ行かず、左に曲がればよい。
他にも魔法探索部、薬学研究会といったものから、ホラー研究会といった趣味全開のものまである。
アインも蛍も物珍し気な様子だった。
「ねえねえ、そこの少年、うちに入ってくれない?」
不意に一人の二年の美人の先輩が現れ、そういうとボタンを二つ外して胸の谷間を強調してくる。
青い髪にこの巨乳での色仕掛けは、「何で攻略対象外なんだ」と言われたお色気要員で間違いないだろうな。
「秘薬研究会なんだけど?」
「他に行くところあるんで」
そっけなく応じて先を急ごうとすると、左手をつかまれて柔らかい感触を押し付けられる。
「そんなつれないことを言わないで。ね?」
甘いささやきは、免疫のない男子生徒なら一撃でノックアウトされるだろう。
俺は(ゲームで)免疫ができてるし、何よりすぐ後ろを歩いてた蛍を思い出せば、たちどころに冷静になれる。
「先輩? そういうはしたないことをなさらないほうがあなたのためかと存じますが?」
蛍は無表情で、いつもより三回りくらい低く、冷たい声を放つ。
冬の雪国の空気ってこんな感じなんだろうなといやでも思わされる。
「そ、そうかもね……」
蛍の迫力に圧倒された先輩はそそくさと逃げ出す。
ホッとしていると、蛍はこっちに視線を向ける。
「エースケ殿……残念でしたか?」
背丈はあんまりかわらないのに上目遣いをするという器用なまねを見せた。
反射的に威嚇したものの、冷静になって俺の意見を無視したのはまずいと気づいたってところか。
「いや? 蛍のほうがかわいいしな」
これはウソじゃない。
蛍並みの美貌の持ち主はメインヒロインとサブヒロインくらいだ。
メインヒロインに対抗できるのはヒロイン級だけというのは、大事なルールじゃなかなって思う。
「そ、そうですか……ならばいいのですが」
蛍はだらしなく頬をゆるめるのを必死にこらえてる、といった態で応じる。
だって蛍やフィーネはさっきの先輩に負けないスタイルだし、と言えば台無しになりそうだな。
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