第49話 部活見学に行こう

 着替えて帰りのホームルームを終えると、蛍とアインが別々の方向から俺の席までやってくる。


「災難だったね。大丈夫だった?」


 アインは同情たっぷりに気遣ってくれた。


「まあな。運がよかったよ」


「君が風連坂さんと組ませてくれなかったら、僕がやばかったかもしれないと思うんだ」


 蛍と仲いい俺をねたんでの暴走だったので、アインと組んでたら何も起こらなかったかもな。


「明日からどうなるんだろうね。この三人が組めるなら話は早いんだが」


 俺が言うと、蛍は神妙な顔つきで言った。


「二人ともそれがしがお守りします」


「女の子に守られるって、シジマくんはどう思う?」


 アインが複雑な顔で聞いてくる。


「蛍はとても強いから、安心して守られるな」


 即答すると彼は唖然とし、蛍はうれしそうに微笑む。


「お任せください」


 アインは俺たちの顔をかわるがわる見比べ、何かに気づいた顔になる。


「風連坂さんがいいならいいのか」


 そういうことにしておこう。


「エースケ殿、このあとはどうなさるのですか?」


 蛍はタイミングを見計らってたずねてくる。


「部活の見学でも行こうかと思っているんだが、蛍も来るか?」


「はい!」


 うれしそうに元気よく返事をした。

 子犬が勢いよく尻尾を振ってる姿がはっきりとイメージできる。


「アインはどうする?」


 話を振ってみると、彼はギョッとした。


「僕、お邪魔じゃないかな」


 ちらちらっと蛍を見る。


「まさか。エースケ殿の友達でしょう?」


 俺が友達と交流するのを邪魔する気はないと、蛍は笑う。


「なら、一緒に行かせてもらおうかな。他に友達いないし……」


 アインはわりとボッチ気質らしい。

 まだ学園がはじまって間がないとは言え、俺と蛍以外と話してるシーンはほとんどなかった。


 俺と同類だな。


「アインは入りたい部活は決めてるか?」


「いや、まだだけど」


 アインはそう答えたから、こっちをうかがう。


「シジマくんは決めてるの?」


「錬成部かダンジョン探索部をのぞいてみようかなと」


「へえ」


 俺の答えに意外そうな声を出す。


「何か不思議そうだな?」


 と聞くとアインは笑って言った。


「てっきり錬成部一択かと思っていたから」


 はたから見たらそう思われるのかな。

 自覚をしていないわけじゃないが。


「それについては申し訳なく思っております……」


 蛍がシュンとしてしまった。

 別に彼女のせいじゃないので、肩をぽんぽんと叩いてなぐさめる。


「いや、蛍と同じ部活に入るのはいいアイデアだなと思ったからで、蛍が気にすることはないよ?」


「は、はい……」


 蛍は真っ赤になってうつむく。


「やっぱり僕はお邪魔じゃないのかな」


 アインの小声は聞こえなかったフリをする。 

 こいつは入りたい部活はないのか。


 大器晩成タイプで一番いいのは魔法探求部だ。

 火力高い魔法使いが並んでるし、シェラも実は所属している。


 名前から予想できる通り、魔法使い以外の入部はお断りだ。

 アインが前衛じゃなかったら押し込んだんだがなぁ。


 前衛の晩成型となると、前衛のフォローが望めるダンジョン探索部あたりが無難だな。

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