第46話 最悪にきつい

 俺が様子を見に行くと、わらわら人形三体に囲まれて腰を抜かしてるメガネがいた。


 これ噛みつき石だったら助けるのは無理だったし、こいつの人生もおわってただろうなと思いながら一番左のやつを蹴り飛ばす。


 蹴り一発で倒せるところが好きだし、チュートリアル用モンスターなんだなと思う。


 噛みつき石が混ざってることには悪意を感じざるを得ないが、さっさと助けよう。

 

 こんなやつのために自分の成績に影響されたくない。

 俺が三体目を倒した時、メガネは頭を抱えて震えて、今にも泣きそうだった。


 戦えないのに単独先行したのか……無謀さにはあきれてしまう。

 そこに肩に金色の鳥を乗せたシェラがやってくる。


「馬鹿なまねを……大丈夫?」


 彼女の声にトゲがあったのは当然だ。

 ところが、そこでメガネは俺をにらんでくる。


「こ、こいつのせいだ、こいつがわざと俺のあとをついてこず、孤立させたんだ!」


「は?」


 何を言ってんだ、こいつ。

 助けた礼を言われず、すべての罪をなすりつけようとしてくるとは。


 片方だけだったらまだしも両方は最悪にきつい。


「何を言ってる? キミがシジマくんを無視して勝手に進んだだけ。私はしっかり見てたから、偽証の罪が加算されるよ?」


 シェラの声はブリザードのように冷たく強烈だ。

 

「ひっ」


 そのことに気づいたメガネはびくっと震える。


「ローラン先生に報告に行こう」


 シェラが言うと金色の鳥が羽ばたき、ダンジョンの中に消えた。

 あれはシェラの使い魔で、ローランのところへ一足先に報告に行ったんだろう。


「キミ、まさか今回のことを想定してたわけじゃないよね?」


 探るような目つきでシェラは声を落として問いかけてくる。


「まさか」


 俺が予想できたのはメガネが味方戦力としてアテにならないところまでだ。


「何でまた?」


 そんな疑いを持たれたのか。

 実のところ予想はできているが、たしかめておきたい。


「キミと一緒にダンジョンにもぐってたのは、サムライの女の子でしょ?」


 蛍に別のやつと組むように言ったのは、メガネを陥れるためじゃないのかって発想にいたったわけか。


「アインって男子を心配しただけですよ。誰が余るかなんて、入学したての段階で予想できるはずがありません」


「それもそうね」


 納得したというよりは、本気で疑ってたわけじゃないんだろう。


 腰が抜けたこいつをどうやって引っ張っていこうかと思ってたら、ローランがやってきた。

 

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