第41話 持ち運びやすさも大事です

 やってきたシェラに蛍と遊ぶところを見せてみる。


「……これはいい。売りに出すべき。私とフィーネ先輩の実家に連絡を取りましょう」


 シェラは即決した。


「え、いいんですか? お二人の家で」


 どっちか片方が独占販売するんじゃないかと思っていたんだが。


「二人の家でやったほうが売り上げが伸びて、キミも儲かるでしょ? キミの利益を最優先させるべき」


 シェラは淡々と言っているが、猫のような青い瞳には不本意そうな光が強い。


「すみません、そのへん先入観があったみたいで」


 蛍は無言でそっと首を縦にふる。

 自分も間違った先入観を持っていたと示したのだろう。


「仕方ない。いろいろ言われてるし、信じてしまう子もいる」


 俺たちが謝意を示すと、シェラはそう言って許してくれた。

 シェラはやっぱりいい人だよな。


 心を開かないと冷たいだけで。

 

「……持ち運び用の袋はないの?」


 周囲を見たシェラは首をかしげる。

 ボードとコマしかないんだからそう思うのは当然だ。


「ええ、これを作るのに夢中になってて、忘れてました」


 シェラは愉快そうに少し口元をほころばせてから言う。


「ボードはともかくコマはこのままじゃ運びにくい。入れる箱は必要だと思う」


 もっともだったので何度もうなずいた。


「わらわら人形と噛みつき石のドロップで箱作ります」


「それがいい」


 シェラは賛成してくれたのだが、一つだけ問題がある。


「残念ながら箱を作るほど素材は余ってませんが」


 噛みつき石とわらわら人形のドロップはまだ残ってるんだが、前者しか箱作りには使えない。


「というわけでこれからもぐってきます」


「できたら持ってきて。私は戻ってフィーネ先輩に報告する」


 シェラは小さくそう言って立ち去る。

 ここで手伝ってもらえると思ってなかったので別に驚きはしない。


「ボードはともかく、コマはどうするかな……」


 とりあえず手伝ってくれるとしたら蛍のほうだ。


「それがしと手分けすればいいのではないですか? ボードは二つ折りにできますし、二人で分ければ持ち運べるでしょう」


 中級道具袋なら両方入るし、それしかないか。

 ボードは俺が、コマは蛍が入れた。


「俺のほうはもうきついな」


 上級道具袋ともなればもっと楽になるんだろうが。


「アイテムドロップはそれがしのほうに入れたらいいですよ。石や木を集めたらいいのですよね?」


「うん。噛みつき石を乱獲するのが手っ取り早いかも」


 ただ、作るサイズを考えると量は相当必要になる。

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