第38話 新しいゲーム
とりあえずありあわせの素材でコマとボードを作ってみる。
それまではいいんだが、マス目と白黒の色だけはどうにもならないので、自分の手でやるしかない。
蛍が手伝ってくれたので、時間は短縮できた。
「これでどうするのですか?」
と聞いてきた彼女に改めてルールを説明する。
まずはコマを四枚並べ、次に黒と白を置いていく。
「こうやって同じ色で挟んだコマをひっくり返していく陣取りゲームの一種だな。マスが埋まった時、色が多いほうが勝ちなんだ」
「ふむ、シンプルのようでいてなかなか奥行きがありそうですね」
蛍はそれなりには理解してくれたらしい。
流派の影響でたしなむ程度にやっていたみたいだからな。
「一回やってみるか?」
「え、いいのですか!」
「ああ」
何人かいる他の生徒たちは迷惑そうな顔をしてるが、気づかないフリを決め込む。
錬成した品物のできをチェックするのも錬金術師のたしなみだし、仕方がないよね。
やってみたが蛍はけっこう強かった。
それとも俺が大して強くないのかな?
「むう……それがしの負け、ですか」
蛍は悔しさを隠し切れない様子だった。
案の定負けず嫌いなんだな。
初めてやるボードゲームで負けるのはやむをえないと俺なんかは思うんだが、この意識の差が英雄になるかどうかの分かれ目なんだろうか。
俺は英雄になりたいわけじゃないから別にかまわないが……。
「もう一回やってみるか?」
「いいのですか?」
蛍は大喜びで聞き返し、次にハッとして咳払いをする。
「いいのですか? これを広めるのが先決ではないですか? きっとすごい商品になりますよ!」
ああ、うん。
商品の売り込みを優先してくれたのか。
俺としてはもうちょっと誰かに見てもらったほうがいいと思うんだが。
「ひゃひゃひゃ、また面白そうなものを作ったね、シジマくん」
いつの間にか来ていたウィガンが横からいきなりそんな声をかける。
俺はビビったが、蛍は気づいていたらしく平然としていた。
「すみません、敵意がなかったもので」
気づいていながらも俺に知らせていなかったことを、彼女はわびる。
「いや、いいんだよ」
笑って許してウィガンに意見を聞いた。
「ウィガン先生はどう思いますか?」
「ひゃひゃ、もう一回最初からプレイしているところを見てもいいかね?」
そのほうが評価しやすいってわけか。
うなずいて俺たちは最初から並べ、今度は俺が白になってはじめる。
蛍はコツを理解したのか、さっきより強かったが何とか勝ちを拾う。
空気を読んでわざと負けたら、絶対怒るからなぁ。
やっぱり悔しそうな蛍を横に、ウィガンの顔をうかがう。
「これはすばらしい! ぜひとも売りに出すべきだね!」
ウィガンは興奮で真っ赤になって早口に称賛してくれる。
「権利だけ売って製造販売を他人に任せるのってありです?」
楽して金だけ入ってくるのが一番なんだよな。
「いいね! 真の研究家とはそうあるべきだね!」
ウィガンは絶賛して肯定してくれた。
なるほどね、使えるアイデアを出して売っていくというスタンスはアリなんだな。
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