第21話 具体的な腹案(当面の目標)

「おや、そんな風に思われていたのか」


 これまた計算外だ。

 きらわれてないとは思っていたが、高く評価されるようなことはまだしていないつもりだったからだ。


「勘ですから説明のしようがないのですが」


 蛍は珍しく言いよどむ。

 俺だって別にごちゃごちゃ言うつもりはない。


「入学式がはじまってみんながダンジョンにもぐるようになったら、お別れかなと思っていたんだけどな」


「そうなのですか? 一緒に行動する機会はあるのでは?」


 蛍はきょとんとする。


「仲間にいると便利なジョブの奴らが一気に増えるからね」


 彼女なら選び放題だろう。

 ゲームでも主人公と知り合った時、囲まれてるような状況だったからな。


「エースケ殿は合理的な判断を重視なさるのですね」


 蛍はそう言ったが、うっすらと批判的なニュアンスがある。

 情と義理を重んじる性格なんだもんな。


 遠慮してるのは俺が彼女を切り捨てるのではなく、切り捨てられても仕方ないという言い方をしたせいだろう。


「選ぶのは蛍だけど、選ばれなくても仕方ないとは思うよ」

 

 プレイヤーはけっこう勘違いしてたのだが、ここですぐ謝ると蛍相手だとよくない。


「それがしが打算だけで動く存在に見えますか?」


 拗ねたような顔と少し強くなった口調。

 緑のまなざしから感じられる強い意志。


「見えないけど、だからこそだ」


 俺がきっぱり言うと蛍はきょとんとする。


「少しは計算もしたほうがいいよと忠告させてほしい。友達だからだ」


「……それがし、考えなしと思われているのですか」


 蛍はがっくりと肩を落とす。 

 そう、忠告という形をとればいいのだ。


 この形なら彼女は聞く耳を持ってくれるし、もっと仲良くなることもできる。


「そこまでは思ってないけど、友情のためにはいくらでも損しても平気そうな気はするかな」


 と言っておいた。


「俺のために自分のことを後回しするというのは、俺がいやなんだよ。友達の足を引っ張りたくないという気持ち、わかってくれるだろう?」


「……エースケ殿を足手まといと思ったことはないですが、それとは別に貴殿のお気持ちはわかりました」


 蛍はそう言ってうなずく。


「まあ君は俺と釣り合わないと引き下がるほど、あきらめはよくないよ」


 このタイミングで言い放つ。


「現状差があるなら埋めるまでだと思ってる。だからよかったらまた組んでほしい」


「わかりました」


 蛍は笑い、握手をかわす。

 結局同じことではないのか、という野暮なことを彼女は言わなかった。


 けじめの問題だと理解してくれたのだろう。


「エースケ殿のことですから、具体的な腹案はありそうですね?」


 蛍の瞳には感心の色が強い。

 ごちゃごちゃ言った手前、説明はしておこうかな。


「まあね。一年のうちにスキルレベルⅣを目指したいね。戦闘での立ち回り方はその時覚えよう」


 蛍と一緒だと、やる前にモンスターを倒しちゃうからな。

 楽でいいのは否定できない。


「ほう……?」


 蛍は怪訝そうにまばたきをする。


「戦いの道を目指すとおっしゃる?」


 彼女は錬金術師について詳しくないから、こう疑問に思うんだな。


「いや。自衛手段を持つレベルだよ。俺が自衛できれば蛍だって戦いやすくなるだろう?」


「もっともです」


 蛍は納得してくれた。

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