第20話 勘は悪くない

 会長に聞いてみたいが、今から聞くと何か自意識過剰っぽく見られる気がする。

 それよりも生徒会に加入する手順を思い出しておこう。


 主人公が生徒会に勧誘されるイベントフラグを立てる方向でいきたいが、もっとも脇役錬金術師の俺はまったく同じ道を通ることは難しい。


 錬金術師だからできる点でカバーしてみよう。


 ダメだったらダメだったらまた次の案を考えればいい。

 ゲームじゃなくなったからこそできるようになったことだってあるだろうな。


  

 というわけで俺は蛍とダンジョンにもぐり続けた。

 ずっと二人で組んでたおかげで、蛍と連携の取り方が理解できてきた。


「今日も組んでくれてありがとう。ほい、報酬のポーション」


「かたじけない」


 単独でならもっと進める蛍につき合ってもらう形なので、報酬を払っている。

 と言っても低級ポーションだが、蛍は喜んでくれた。


「他に組んでくれる人がいないので、ポーションが充実するのはありがたいですね」


「中級道具袋を錬成できたら、それも譲るよ」


 俺がそう言うと蛍はあわてて首をふる。


「それはいただきすぎになると思います! それがし、コツコツ貯めたお金で買えるはずですし」


 俺と別行動の時もガンガンもぐっているらしく、現時点の稼ぎはなかなかのものになってるようだ。


「じゃあ割り引きで売ろう。これなら納得できるんじゃないかな?」


「そういうことでしたら……」


 蛍はちょっとためらいながらも受け入れてくれる。


「ちなみに蛍って今の所持金はどれくらい? 参考までに知りたいんだが」


「フィラー銀貨五十枚というところですね。やはり深くまでもぐらないと稼ぎにくいようです」


 蛍はあっさり教えてくれたが、意外な結果だった。

 俺のほうが稼いでいたのか。


 これはウィガンの好意と言ったほうが正しい、イレギュラーなものだが。


「エースケ殿は稼いでいらっしゃるのですか?」


 話の流れ的には自然だろう。

 蛍は錬金術師についてうといはずだから、普通の一年は現段階じゃ稼ぎようがないと知らなくても変じゃない。


「ウィガン老師って人から、フィラー銀貨を百枚ほどもらった」


 他に人がいなかったから打ち明けた。

 蛍には隠しごとはできるだけしないほうがいいからな。


「百!? 錬金術師とはそのようなジョブなのですか」


「違う、違う」


 蛍は大いに驚き、大いに誤解しそうだったので訂正しておかないと。

 ウィガンとの件を説明すると、何度もうなずいていた。


「普通では思いつかない発想をしたからこその褒賞ですか。ウィガン老師という方は立派な御仁ですね」


 というのが蛍の評価だった。


「それにしてもやはりエースケ殿はすばらしいお方でしたか。それがしの勘もそう悪くはない」


 何やら自己満足の笑みを浮かべる。

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