第19話  錬成釜を持つ方法

 せっかく教師に会えたのだから、気になっていた点を質問しておきたくなった。

 口の堅い教師は何も教えてくれないが、ウィガンはけっこう軽い。


 いい意味で俺のことは目をつけただろうから、期待はできる。


「先生、質問があります」


「ひゃひゃひゃ、何だね?」


 ウィガンは機嫌よさそうに笑いながらこっちを見た。


「一年のうちに自分用の錬成釜を持つことは可能でしょうか?」


 ゲームではできなかったことだが、『雑多な葉』なんてものもゲームでは作れなかった。


 つまりゲームならではの制約が外れている可能性がある。


「可能だよ」


 ウィガンはシンプルな答えを即座に言う。


「できるんですか?」


「部活に入るか、生徒会に入るかすればいい。錬成部ならいつでも君を歓迎しよう。ひゃひゃひゃ」


 念のため確認しておいたが、これは一致しているようである。

 やっぱり普通にやろうとするとこうなるよな。


 ……ゲームで言えば生徒会に入らないとシェラとフィーネの攻略はあきらめるしかなかったんだよな。

 

 どこの組織に所属しようと攻略に支障がなかったのは蛍を含めて数人くらいなのである。


 錬成部に入るメリットって錬成機会が多いのと、あとはせいぜい錬金術師のヒロインと接点が増えるくらいかな?


 当の錬金術師ヒロイン自体はどこに所属しようがパーティーに入ってくれるタイプで攻略できるし、自分用の釜を持てたら錬成機会はある程度カバーできそうだよな。


 もちろんゲームじゃないのでこの制限が外れた可能性もあるんだが、単純に考えれば生徒会に入るメリットのほうがデカい。


 生徒会に入るにはフィーネに気に入られること、次に副会長のシェラとパウルの評価を得ることが条件だったはず。


 パウルとは会えなかったんだよなぁ。

 まじめなキャラって設定だっただけにたぶんタイミングが悪かったんだろうが。


「どうしようかな」


「すぐに決めなくてもいいだろう。なんせこれから入学式なんだから」


 ウィガンに笑われたけど、言ってることはもっともだ。

 寮に戻って少し考えたうえで決断する。


 生徒会に入ることを視野に入れて動こう。

 深い理由があるわけじゃなく、フィーネとシェラと疎遠になる可能性がもったいないからだ。


 この二人にまさるパイプを持ってるメインヒロイン、実はいないんだよな。

 それに生徒会に入りながら部活だってできるんじゃないか?


 かけもちを禁止されているのは会長だけなんだから。

 おそらく俺が生徒会長になることはないので、どっちをとるか悩まなくてもいいはずさ。


 ウィガンは俺の勘違いに気づいていたけど、黙っていたんだろうな。

 あの人、錬金術が絡まないところだとちっとも親切じゃないもんな。

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