第18話 ウィガン銀行

「ええ、持ちきれないですね」


「そうか。では私の最上位道具袋を貸し出そう。持ってきてくれたまえ」


 老人はそう言ってポケットから黒い袋を無造作に取り出し、ぽいっと投げてくる。


「あ、ありがとうございます」


 最上位道具袋ってけっこう貴重品で所有できる人は多くはないんだけどなあ。

 このウィガンにかかれば大して重要ではないらしい。


 まあウィガンは錬金術師として相当なレベルで、作品の中で超えたと明言されるのはメインヒロインの一人くらいだが。

 

「私の部屋はわかるかな?」


 首を横に振ると、ウィガンはニヤニヤ笑った。

 何でここで笑うんだってタイミングで笑うから、気持ち悪いっていうプレイヤーがいたんだよなぁ。


 たぶんシェラも同じようなことを思っているだろう。


「いえ、知りません」


「そうか。そこにある緑のヘビの模様が描かれた扉がそうだよ」


 しわくちゃな指である方向をさす。

 そう言えばそうだった……他の点のインパクトが強すぎて、忘れていたな。


「いつでもいい。気軽においで」


 そう言ってさっきの扉の中に入ってしまう。

 気軽に行けるような相手じゃないんだがまあいいか。


 こんなことでビビっていたら億万長者の夢は遠い。

 借りた最上位道具袋に売りたいアイテムを詰め込み、さっさと戻ってくる。


 誰とも知り合わないな。

 もしかしてちょっと早すぎたんだろうか。


 部活のこととかまだ何も決めてないんだが、もうちょっと知り合いを作っておきたかった。


 蛍、フィーネ、シェラはいずれもすごい存在だけど、俺はわりと欲張りなのである。


 たった今自覚したところなんだが。

 ウィガンに最上位道具袋を差し出すと、赤い瞳を輝かせた。


「何やら新しい香りがするな」


 どうしてわかるんだろうか。

 最上位道具袋の中に入ってしまえば、匂いはしなくなるはずなのに。


 ほんと変態じみた特技の持ち主だと思う。


「ほほう」


 アイテムを取り出したウィガンは『雑多な葉』をまじまじと見つめる。


「葉と葉を錬成し、それをさらに錬成したものだね?」


「そうです」


 一流が見ればすぐにわかるんだなと感心した。

 これは世界観的に不思議じゃないし、特別な素材を使ったわけじゃない。


 相手がウィガンということならなおさらだった。


「新入生がそんな発想をするとはすばらしい。ひゃひゃ」


 ウィガンは歯をむき出しにして笑う。

 

「アイデアをたたえて、フィラー大銀貨十枚で買い取ろう。どうだね?」


 金額に俺はびっくりしてとっさに答えられない。

 フィラー大銀貨は学園があるフィラー王国の通貨で、一枚一万円程度の価値がある。


 俺が渡したものに売り値段をつけるなら、せいぜい二十円くらいだろう。

 それを十万円で買い取ると言われたのだ。


「ありがとうございます」


 フィラー銀貨が百枚あれば学園生活は一気に楽になる。

 ここは喜んで受け取っておく。

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