第14話 目指す先は

「あの量だとスキルレベルがあげられないと思うんだけど、何か裏技でも使ったのかしら?」


「ええ。秘密ですが」


 まねされて困るようなもんじゃないが、積極的に広めたいわけでもなかった。

 ライバルに塩を送るほどの余裕はないからな。


「そう」


 フィーネは面白そうに笑う。

 これは脈ありかもしれない。


「それであつかましいお願いなのですが」


「道具袋を明日も借りたいのかしら? 私はかまわないわよ」


「ありがとうございます!」


 あっさりと許可が出る。

 錬成スキルのことを報告して正解だったようだ。


「会長? 新入生を特別扱いしていると誤解を招きかねませんが?」


 シェラがクールに諫める。

 

「特別な価値がありそうな子を相応に扱うだけよ」


 フィーネは優しく、きっぱりと彼女の声を却下した。

 シェラはそっと息を吐いたものの、黙ってしまう。


 何が何でも諫めたかったわけじゃなさそうだな。

 まあ俺って別に悪いことをしてるわけじゃないし。


「というわけだから、明日道具袋を取りに来てね」


 さすがに連日ダンジョンに同行できるわけじゃないらしく、そんなことを言われた。

 

「一〇○○に女子寮の外で待ってるわ」


 蛍とのやりとりを知ってるからだろう。

 俺にしても手間が省けてちょうどいい。


 道具袋を借りられるだけでもありがたいので、礼を言って出ていく。

 まだ時間的に余裕はあるものの、現段階じゃできることにかぎりがある。


 ここは大人しく部屋に戻って今後のことを考えてみよう。


 部屋についてるシャワーを浴びてリフレッシュし、ぼんやりと思考をはじめる。

 今日の段階で蛍、フィーネ、シェラと知り合えたのはとんでもなくラッキーだった。


 フィーネの実家グルンヴァルト家は大国の大貴族であり、バッドエンド以外では必ず大きな存在感を発揮する勝ち組である。


 錬金術師としてぜひバックについてほしい家の一つだった。

 ロングフォード家もグルンヴァルト家ほどじゃないが、かなりいいところである。


 蛍については風光一刀流は有名な流派の一つで、そっち方面の知己が多い。

 彼女が気に入る装備を用意できたら、武人たちの間で名声を得ることができるだろう。


 しかし、あれだな。


 これだと対魔王で活躍する英雄たちの装備を作る裏の実力者的なポジションを目指してみるか?


 億万長者を目指したいって目標と普通に共存できるし。


 ゆくゆくは『ソーマ』『エリクサー』『ネクタール』『アムリタ』といったものを錬成できるようになりたいと思っていたところだし。

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