第12話 連続遭遇

 

「じゃあ明日、一〇〇〇(いちまるまるまる)でどうだ?」


 日本で言うところの午前十時である。


「心得ました」


 無事約束を成立させて蛍は去り、フィーネと二人きりになった。


「案内するわ。ついてきて」


 彼女の誘導で俺は生徒会室へとやっていく。

 ゲームだとこの辺ショートカットされてた部分なんで、道順はけっこう新鮮だった。


「生徒会は活動してるんですか?」


 ゲームだとしてなかったはずだよなあと思いながらフィーネにたずねる。


「してないわよ。私と副会長がいるだけね」


 ここは同じだった。


「それでも手続きはできるから安心して」


 その点は心配してない。

 生徒会室なあ……イベントで生徒会入りするルートはあったなぁ。


 そのルートで見た覚えがある外見に中身だった。

 大きな窓ガラスの下に生徒会長室があり、左右に縦長のテーブルと椅子が三つずつ置かれていて、一つだけ埋まっている。


 俺たちの来訪に黒い表紙の本から視線をこちらに向けたのは、一人の少女だ。

 生徒会副会長にしてサブヒロイン、シェラ・ロングフォード。


 サブヒロインと言っても普通に強いし、個別エンドがあるんだが。

 金髪ショートヘアに白皙の美貌、猫を思わせる青い瞳はクールな印象を与える。


「会長、そちらの男子は? 新入生のようですが?」


 主人公が生徒会に初めて来たときと同じセリフだった。


「錬金術師志望で、今日から錬成釜を使いたいっていう向上心あふれる生徒なのよ」


 フィーネの説明にシェラは納得したようである。

 

「なるほど、私は生徒会の副会長を拝命しているシェラ・ロングフォードと申します。よろしく」


 よろしくと言ったわりに俺の名前を聞くつもりはない。

 ここも同じだった。


 シェラは真面目だがとっつきにくい性格である。

 他の生徒会メンバーと仲よくしていれば勝手に好感度を稼げるタイプだから、あわてて売り込む必要はないが。


「そこに座って少し待ってね」


 フィーネの指示で、七つの役員椅子から離れた場所にあるゲスト用の椅子に腰を下ろす。

 

 気まずいが仕方ない。

 正直、入学式の一週間も前の段階でこんなに立て続けに重要キャラと知り合えるとは思わなかった。


 今のところ順調すぎて怖いくらいである。

 日本でたとえるなら国立大の医学部を卒業したレベルか?


 ……さすがにちょっと言いすぎか。


「はい。これを教務課に出すといいわよ」


 申請書にフィーネのサインが書かれている。


「錬成が終わったら道具袋は返しに来てね」


「わかりました」


 俺たちの会話が聞こえたシェラがおやっという顔をした。

 だが、口には出さない。


 さて、教務課に持って行ってようやくメインに入れそうだ。

 錬成スキルはあげればあげるほどあがりにくくなる。


 それを考えれば今のうちにさっさとあげられる分をあげておきたい。

 

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