第11話 誇り高き武人
「蛍はいいと言ってくれるんだろうけど、俺からすれば一方的に利益を受け取ってるだけで、蛍に何も返せてない気がするんだよな」
本音を率直にぶつけた。
「二人だけだった時とは事情が変わったんだし、どうだろうか?」
「……たしかに事情は変わりましたね」
蛍はまだ迷っているようだったので、背中をひと押しする。
「先輩と連携して戦うのもいい修行になるんじゃないか? むしろ先輩と戦える機会のほうが貴重だと思う」
「もっともなご意見です」
蛍は俺の意見の正しさを認め、フィーネに笑いかける。
「そのようなことにすぐに思い当たらない未熟者ですが、改めてよろしくお願い申し上げます」
「いいのよ。誇り高き武人って感じで素敵だわ」
フィーネは大らかな態度だった。
どっちも話せばわかるタイプなのが幸いである。
第二階層で俺は安全圏から戦いをながめていた。
蛍は一歩前に出て果敢にモンスターに攻撃をする。
一方でフィーネは俺をかばいつつ、蛍から流れてきた敵を処理していた。
当然なのだがこの辺の敵は全部瞬殺コースである。
わらわら人形、コボルトはともかく、噛みつき石はそんな弱くなかったはずだが、蛍もフィーネも一撃で倒してしまう。
おかげで素材集めが大いにはかどる。
「すごいわね、風連坂さん」
フィーネも目を丸くしたのは当然だった。
予備知識がなかったら俺だって呆然としていただろう。
蛍の強さは明らかに新入生レベルじゃない。
「グルンヴァルト先輩こそすさまじいです。聖騎士とは本来守りのジョブだったはずですが」
蛍もまたフィーネに呆れているようだった。
蛍が新入生レベルじゃないなら、フィーネは学生レベルじゃないからな。
ゲームデータ的にはこいつらがいれば主人公がいなくても、ラスボスは倒せてしまう。
俺だけ場違いだが、現時点じゃ仕方ない話だ。
「頑張って錬成をスキルあげて、二人がほしいものを作れるようになりたいな」
軽く決意表明をする。
わりと無謀な目標なのだが、二人は笑わなかった。
「エースケ殿は立派な向上心をお持ちです。きっと天運が開くでしょう」
「高い目標をかかげながら、現実的な行動を選ぶ。そんな子は大成するわよ」
彼女たちはそれぞれの言葉で肯定し、はげましてくれた。
頑張りますとうなずく。
上級道具袋もやばくなってきたので、一度地上に帰った。
「蛍とはここでお別れかな? それともついてくる?」
俺は蛍に聞いてみる。
錬金術師の錬成など、彼女はいなくてもかまわない。
一人になれば本来の目的がようやく実行できるわけだし、ついてこなくても不思議じゃなかった。
「ふむ。ではそれがしは引き続きダンジョン探索させていただきましょう。ついていっても何の役にも立たないでしょうからな」
蛍の返事は予想通りだったから落胆はしない。
「よければまた明日、ダンジョンにつき合ってくれ」
「それはこちらこそお願いしたいですね」
笑顔で承諾されたのでひと安心だ。
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