第4話 鍛錬用ダンジョン

 鍛錬用ダンジョンは体育教官室の横にある入り口を使って入る、地下ダンジョンだった。


 入り口にはジャージ姿の体育教官が交代で見張りをしてる。

 今の当番は四十歳くらいのボサボサな茶髪にひげだらけという、だらしない印象の男性教師だ。


「……新入生か。まあパーティー組むならいいだろう」


 やる気なさそうにあくびをして、俺たちを通してくれた。

 これでもこの人けっこう強いんだけどな。


 中に入ったところで蛍が小声で言った。


「先ほどの教官、やる気なさそうで隙だらけに見せかけて、まったく隙がありませんでした。相当な手練れですね」


 その顔は緊張半分、喜び半分といったところか。


「俺、そういうのはわからないから、頼りにしてるよ」


「エースケ殿は錬金術師ですものね。お任せあれ」


 蛍はうれしそうに微笑む。

 こうして間近で見ると破壊力がある笑顔だった。


 画面ごしではさんざん見慣れてたはずなんだけど、現実として見るならまた格別だな。

 彼女は自分の美貌に見とれる軟弱な男はきらいって設定だったはずだから、気取られないように気をつけよう。


 主人公と恋愛パートが進むまで、女らしさなんて気にとめていなかったツワモノだしな。 


「二人だから仕方ないけど、気配探知が難点かな」


 できればローグがほしい。

 今言っても仕方ないんだけど。


「それならそれがしがある程度できますよ?」


 と蛍が言った。

 うん、実は知ってるよ。


 序盤加入のサムライなのに気配探知スキルを覚えてて、しかも成長していくのはプレイヤーの驚きの一つだ。

 知ってることを隠したほうがいいに決まってるので、目を丸くしておく。


「そうなんだ。知らなかった。サムライってすごいんだね。それとも蛍がすごいのかな?」


「これはそれがしが学んでいる風光一刀流という流派の技能です。すばらしいのは流派の教えですね」


 蛍はにこやかに教えてくれた。

 彼女はサムライという生き方と、風光一刀流の教えを誇りに思ってる。


 彼女と仲よくするうえで頭に入れておきたいポイントだ。


「剣の流派は知らないんだけど、風光一刀流がすごそうなのは伝わってきたよ」


 と言えば蛍の機嫌が目に見えてよくなる。


「ありがとうございます。では気を引き締めてまいりましょう」


 だからと言って浮かれることなく、真剣なまなざしでダンジョンの奥へ鋭い目を向けた。


「ああ。後ろは俺に任せてくれ」


「それがしが無知で申し訳ないですが、錬金術師の戦闘スタイルをうかがっても?」


 蛍は俺をかばうように前に出たまま問いかけてくる。


「基本色んなアイテムを投てきしていく。相手を弱らせるポーションを投げるとか、回復アイテムを投げるとか」


「なるほど……今日のところはそれがしは護衛をしたほうがよさそうですね」


 俺のスタイルを聞いてすぐに目的を切り替えてくれたのか。

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