第2話 風連坂蛍
ところで今日の日付はいつだったかな?
この世界でもたしか新聞くらいはあったはずだな。
作中では存在が示唆されてるだけだったが。
室内の内装的におそらくはオウス学園の寮なので、入学してること自体は確定だ。
ドアの下に予想通り新聞がはさまっていたので、取り出して日付を見てみる。
青風の月の一日か。
たしか現代日本の暦になおすと四月の一日になるはずだな。
そして星光歴の二〇五年か。
ようするにゲームが始まる一週間ほど前ってところだ。
主人公は新入生としてこのオウス学園に入ってくるのがプロローグなんだから。
主人公はたしか入学式の直前に寮に入ってたんだが、エースケはもう入ってたのか。
入学式前の新入生でも申請すれば学園の鍛錬ダンジョンにはもぐれるし、素材集めもできる。
メインヒロインの一人がそう言ってたんだからエースケにだってやれるだろう。
今のうちから行動して差をつけておくとあとで楽になる。
錬金術師は錬成スキルのレベルをあげないと、すごいアイテムの錬成ができないし、そのためにはどうしても試行回数が必要だ。
それに俺が覚えてる情報と差異が生まれてないか、早めにたしかめておいたほうがいい。
朝飯を食べ終えるとさっそく事務課に向かう。
新入生は事務課に学生証を提示して、ダンジョン立ち入り許可をもらうのだ。
寮から学園の事務課は徒歩で十分ほどで、微妙に面倒だがやむを得ない。
錬金術師といっても戦闘に加わることもあるんだから、基礎体力はつけておいたほうが絶対いい。
新品の制服を着ていったので特に見とがめられることもなく、学園内に入れた。
事務課に行くと何やらヒートアップしてるっぽい会話が聞こえる。
黒い髪に紫色の長い包みを手にした女子学生と事務員のお姉さんらしき人か。
「ですからあなた新入生ですよね? 一人で鍛錬ダンジョンに向かうのはちょっと!」
「それがしは故郷にてモンスターと戦った経験は幾度もございます。でなければこの学園に入学することも許されなかったのですが、ダメなのでしょうか」
懇願するように食い下がっている。
なるほど、事情は読めてきたぞ。
主人公やエースケの同級生に一人、入学式の前から鍛錬ダンジョンに入ってたことをうかがわせるセリフを言ってたメインヒロインはいた。
あの子は風連坂蛍(フウレンザカ・ホタル)だろう。
黄金と剣豪の国、黒儒からやってきたサムライガール。
メインヒロインの一人であり、プレイヤーがミスらないかぎり序盤に加入し、最後までお世話になる強力な前衛アタッカーだ。
「あの、すみません」
会話に割って入るのはどうかと思うものの、他に職員がいないのだから話しかけるしかない。
さえぎられた女子は案の定迷惑そうな顔だった。
職員はほっとした顔をしたものの、俺が提示した学生証を見て端正な顔を引きつらせる。
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