脇役に転生したのでゲーム知識を活かしてたら、勇者に頼られる伝説の錬金術師になってた

相野仁

第一章

第1話 ゲームの脇役キャラ転生

 アルバテルという剣と魔法のRPGはキャラを育てて魔王を倒しに行くゲームだった。


 当時変わっていたのは最初学園に入学して卒業する学園パートがあることだろうか。


 この時の主人公の行動によって仲間になるキャラが変化し、終盤のストーリーと敵が変わる新感覚大作RPGを謳っていた。


 あいにくと人気が出たのは美麗なグラフィックとかわいい女の子の人気によってだったが。


 恋愛要素が盛り込まれていて、女性キャラとデートイベントや交際イベントもあったのがデカい。


 フラグ管理さえ気をつければハーレム展開もあったのもよい。

 男キャラとの友情エンドまで完備していたのには個人的に驚きだったが、そのせいで女性ユーザーもわりといたようだ。


 前振りと書いて現実逃避をしているのは、俺がそのゲームのキャラ『シジマ・エースケ』になったっぽいからだ。


 漢字だと四十万栄助と書く。

 朝起きたら見覚えのないベッドに寝てて、部屋の中をうろうろしてるうちに偶然鏡を見たのだ。


 鏡の中で手を振ってるのは、水色の髪に緑の瞳に白い肌の小柄な少年である。

 どう見ても日本人じゃない。


 マジかよ。

 アルバテルをかなりやりこんだ俺も、シジマ・エースケについてはあまり詳しく知らない。


 なぜならエースケは主人公の仲間にならず、友情エンドもない脇役キャラだからだ。


 職業は錬金術師で学園を卒業するまでは、彼に合成を依頼したりアイテムを売ってもらえる。


 そこまではいい。

 問題なのは美少女ヒロインが途中で出てきて、彼女のほうが錬金術師として優秀な上に常連になれば仲間にもできる。


 エースケのほうは学園を卒業すると同時にフェードアウトし、再登場しない。

 プレイヤーがどっちの店を利用するか言うまでもないだろう。


 俺だってヒロインが出て来てからはエースケは使わなくなった。

 せめて仲間にできたらやりこみ勢が全エンド制覇のために使い続けたと思うが。


 そんな悲しい脇役キャラは何人かいたな。

 仲間になっても不遇なキャラもいたが、仲間にすらなれない気の毒キャラがエースケだ。


 転生前の俺と同じだな……。

 何がどうしてこうなったのかさっぱりわからないが、こっちの世界でも人の記憶に残らない人生なのか。


 しょせん俺はどこまで言っても人の記憶に残らない脇役キャラだと、馬鹿にされてる気がする。

 何だかムカついてきたぞ。


 たしかに日本人だったころは俺なんてどうせダメなやつだとあきらめていた。


 だが、今の俺はこの世界の知識をたくさん持ってる。

 本当にダメなやつのままなのか、試してみてもいいんじゃないか?

 

 幸いシジマ・エースケってやつは不遇キャラだが、錬金術師というジョブは優秀である。


 メインヒロインがいるおかげなんだろうけど、希少なアイテムを作って販売できる唯一のジョブだ。


 これを利用すれば億万長者にだってなれるだろう。

 億万長者になれば俺を脇役だとあざ笑うやつに、意趣返しができるかもしれない。


 誰かの依頼を機械的にこなすだけだと、名をあげていい依頼が来るまで時間がかかりすぎる。

 シジマ・エースケの場合、一生こないかもしれない。


 つまり積極的に動いていく必要があるわけだが、錬金術師ってやることが多いんだよな。


 戦闘で弱体化ポーションや回復ポーションをばらまく支援職でもあるからな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る