第3話 集合
最近は講義が終わるとすぐにこっちに来て先輩とずっと2人で同じ部屋にいることが多くなったきがする。
というかほぼ毎日そうだ。
だって他に相手がいないからね!
案外先輩と2人、というのは居心地が良いみたいだ。
先輩にも受け入れられている話していても穏やかだしなかなかに優しくそれでいて、私の思っていることがなんでもお見通しであるかのように、私の言って欲しいこと、悩んでいることに対し、的確に対応してくれる。
やはり、1年間も長くいると違うもんなんだろうなぁって感じる。
でもなんなんだろう、この葉川響という先輩。
じつはもの凄く大物で何かを隠しているような気もする。
時折私に向けてくる何か特別なものを見るようなあの眼差しを向けてくることがある。
そうすると私も笑顔で返すのだけれど。
そんな所でも「やっぱりかっこいい先輩だなぁ……」とおもってみたりするのが、もっぱら最近の日常になりつつはあるのだけれども。
さらに時々先輩には「奈帆」と下の名前で呼ばれる事もあり、なかなか良い関係を保っているのではないか、とも思う……
あっそうそう!
ちょっと前に先輩に「君はちょっと変わった人なのかな?誰かに今までそんなことを言われたことは無かったかい?」
って言われたの!
そう言った後はっと気がついたかのように。ごめん、って謝ってきたんだけれどね?かわた人だなー、なんて言われるほど私って"変わってる"かなぁ……
ねえみんなどう思う?まだあんまり分からないかな。
私としては先輩の方がかわってるとおもうんだよねぇ~
そうそう聞いてよ!こないだね先輩がね……
ってこんな事を考えてる暇ではなかった近頃の進捗状況についてだよ!
あれからというもの先輩とは今後どうしていけば良いか、という事について話していた。
先輩は1年の所で神南奏という男の子を見て来たらしく「なんか頭良さそうな子だと思ったけど安心して良いかな。
もう少ししたらこの部屋にたどり着くんじゃないかな」なんて言っていた。
なんで分かるんだろう、そのほかの3人も見たけど美原優という子も大丈夫らしい。4人とも見事に1人でいて全く関わりを持っていないらしい。
それはそれで問題な気がしなくは無いんだけどねぇ、、、
問題は折敷七瀬と日高咲姫であると言っていた。
あの2人はこっちから話しかけて説得しないといけないらしい。
要するに先輩と私は4人をこの同好会に引き込んで活動していきその中で仲を深めていき、色々と情報を引き出していき作戦を考えたいそうだ。
先輩って意外とそういうの好きなのかなー、戦略立てていくの好きな感じかなー。
なんかシュミレーションゲームとかやったら上手そうっていうイメージは確かになくはない。
確かに先輩時々なんの脈絡も無しに変な事言ったりするけど話が飛ぶのか。
色々と思考が省略されているのかもしれない。
そんな私は先輩のこと理解しようと思ったって到底理解できない……敵わないなぁ……なんて思っている。
やっぱり先輩の方が変わっていると思わない?
「失礼します、今ってこの部屋でなんか活動してるんですか?気になったんで来ましたあ、私は美原優です1年です、よろしくお願いします」
本当に来た、何これ凄いタイミングいいんだけどこの人空気読める系ですかぁ?
仲良くなりたいなー。
友達が欲しい。
何より名前に美って入ってるくらいだから見た目もすごい!黒の長いストレートで、それとは対照的に服は白のカーディガン。
その対象さが何とも良い感じだ。
中には黒いTシャツみたいなのを着ていて下は茶色のスカートだ。
そして私は、そんな彼女の姿をみて疑問というか、興味を引かれるのだ。
どうしてなのかなぁ、、、色は白、黒、茶色ともの凄くシンプルなのに彼女がその3色をみごとに着こなしていてとっても似合っっている。
私も少しおとなし目の服だけど到底敵わない。
あっなんかさっきの3色のやつ、ピカソのゲルニカの説明みたい!
あれも基本色は3色のでシンプルなはずなのにでもその絵からその時の人々をとてつもなく重くてその悲惨さをみごとに表してるんだよねー
表しているものは違うけど、そんぐらい凄いの!
えっ?例えが変だって?いいじゃんそう思ったんだから!
ただ、そんなゲルニカともちがって、彼女の見た目は抜群にきれいだ。
なんてどうでもいい事を考えていると挨拶し損ねてしまった。
そのせいでお互いにタイミングを逸してしまって、しばらく沈黙が続いた後、先輩が応じてくれた。
「そうだね、最低限のことはかつどうしているよ、ここに来るなんて中々の感性が据わっているみたいだけど、偶然見かけたって感じかな?」
「まあ正直言えばそうですけどなんか気に入りました、私も子に同好会に入ってもいいですか?」
「良いよ、今はこの女の子と僕1人だけだったから大歓迎だよ、因みにこの女の子の名前は白崎奈帆だよ、君と同じ1年で同学年だよ」
「ありがとうございます、それとあなたが白崎さんね、よろしく」
社交的で礼儀正しい人だなぁみんなもそう思うでしょ!私と正反対だよね!
「あ、うん!よろしくお願いします」
うん、今がチャンスかなぁ、聞くの
「いきなりで悪いんだけど、美原さんの事"ゆうちゃん"って呼んでも良い?」
「良いわよ、なら私も"なほ"って呼び捨てにさせてもらうわね、その方があなたも気が楽でしょう?」
気がきくなぁ……これは響先輩と同じようなタイプかもしれない
「俺のことはどう呼んでくれても構わない、そうだね僕は君のことを美原、と呼び捨てにさせてもらおうか」
「はい、分かりました私は葉川先輩で良いですよね?」
「ああ、よろしく」
……
こんな風にして1人目の女の子は無事に入会してくれた、その後しばらくして、
「失礼します、俺は神南奏です、1年です、この同好会に興味があるので入会し
たいと思いますよろしくお願いします」
意外とかっこいいんだけど。
なにこれずるくない?
この人4人達もしかしてみんな美男美女なの!!?
私だけ、置いて消えぼりじゃん。
置いてけぼりだよぉ、、、
よく見ると響先輩だって意外とかっこいいし、もうっ!
なんて思っていても先輩はなにもなかったかのようにあっさりと奏君の入会を許可し、これで会員は4人となった。
1日で4人のうち2人獲得できた。
5人集まったからバスケットボールができるね!
まあ、私はマネージャー希望で……って、それじゃあひとり選手足りなくない?
のこすところあと2人である。
あと、ちなに私は神南奏、と名乗ったひとのことは奏君と呼ぶことにし、ゆうちゃんは神南君と呼ぶらしい。
なんだか3人ともタイプが似ていてこれから1週間くらいは私1人だけが"変わって"いて少し気まずい思いをすることになりそうだ……。
はやく明るいひと来てぇ……
私はそう願わずにはいられません。
* * *
それから数日たって、私たちは基本的に講義が終わればこの部屋に集まりそれぞれがそれぞれの作業をする、という流れが続いた。
ふと響先輩を見てみると、先輩も同じで、ずっと本を読んでいた。
あの黒い透き通った瞳は一体どうしたら生まれるのだろうか、先輩は去年の1年間、はたまた高校時代中学時代をどうやって過ごしてきたのだろうか……
と気になってしまえばあとはもう聞くしかないのだけれども。
今はその話題に行くまでの展開を自分で作れそうになかった。
急に聞くのもなんかちょっと嫌。
「なあ奈帆、ちょっと良いか?今から話があるから部屋を出よう、良いか?」
ちょうど今先輩のことを考えていたから、急に話しかけられてびっくりしてしまった。
話とはなんだろまあでもある程度は想像つくかなぁ。
きっと折敷七瀬君と日高咲姫ちゃんの事についてだろう。
どうせ本を読みながら考えていたら思いついたんだろう。
「良いですよ先輩、分かりました」
そういって2人で部屋を出てもう1度部屋に入った。こんどは違う部屋、ではあるけれど。
「やあお2人とも調子はどうだい?うまくいっているかい?」
「そうだね、今の所特に進展はないけれども準備は進んでいるよまあ今日はあなたに用はありません、ちょっと場所が欲しかったっんです奈帆と2人で話す場所がね」
「そうかい、なら良いだろうそこに座って話すと良い、ごゆっくりと」
いつも通りのヒュデルだった、しっかし神とはいえお風呂入ってんのかなぁ、、、。
あの長い髪の毛お手入れ大変なんだろうなー、そうだ!今度一緒にどうですかーって誘ってみよっと。
「先輩、話ってなんですか?2人のことですか?」
「そうだ、奈帆にはそれについてお願いしたくてね」
「なんですか?私に出来ることならやりますけど、でも出来ることだけですよ?」
「ああ、構わない心配しなくてもこれくらいなら奈帆にも出来るだろうと思って話そうと思った」
「先輩、意外と私の事信頼してるんですか?」
「まあね、意外と色々考えてるようだし、何より協力しないとこんな大きな事1人できるわけがないだろう」
「それもそうですね、では本題を」
私はなぜか響先輩と話すときだけはいつもみたいにテンション高い系!ではなくこの通り冷静になって話すのだ、なぜだろう?こっと自然とそうさせる何かが先輩にはあるのかもしれないしそうである、という事を私の中のどこかが悟って自然とこうなっているのか私に走るよしもない
「そうだね、まずいうけれどもこのままじゃ絶対にあの2人はこの部屋にたどり着かないだろうねということは僕たち2人でこの部屋まで導かなければいけないのだけれども何か奈帆には考えがあるかい?」
「いや、ないですねそれより先輩はどんな作戦を思いついているんですか?」
「あの2人は基本的には他に対する警戒心が強い、よって下手に私の同好会に来ませんか?なんて言って誘ったとしても変に思われるだけだ、詰まる所僕たちには接点がないんだ僕が誘っても君が誘ったとしても結果は同じでむしろもう2度とこの同好会に入ってくれるということは無くなるかもしれないだろうね、ここまでなのは今までに何かがあったのか、それとも誰かそうしたのか、2択だよね」
誰かがそうしたって、誰がそんなことをさせるんだろう出来るとすればヒュデルくらいだけれども私たちにお願いをしてくるくらいだから邪魔をするような真似はしてこないはずだし……
「そうですね、私もそう思います」
「そして次に、あの4人が転校する前に知り合いだった以外にこの大学にあの2人に知り合いは居ないんだ、それによりその人たちの周りから接点を作っていく、という方法が取れないんだ、これらの事より僕にはあの2人をこの同好会に
入れる方法がないと僕は判断した」
え?結局方法が無いの?こんだけ込み入った話をしておいて無いってどういう事なの?それじゃあなんでこの部屋に先輩は私を呼んだの?私とこの部屋に来たの?ここは私達とヒュデルしか知らない場所、つまりここで何をしたって……まさか?そんな事ってあるの?
「ふっ……」
先輩はよく分からない笑みをこぼした、そしてゆっくりと手を挙げてその手を私の方に……先輩ってそういう人なの?……
「だから僕は2人をこの同好会に入れる事を諦めた、そして僕は2人がこの2人が同好会に入るように誘導して貰おうと思う」
やっぱり先輩はそういう人だった
「え?ちょっと待ってそれって私に誘導しろって事なの?」
「まさか、そんな事させるつもりなんてないだろう?ヒュデル」
「そういう事かい、全く言ってくれるじゃないか君は」
「そうですねちょっとずるい気もしますけどこれしか方法が無いんでね、出来ますよね?神様」
「こんなときだけ神様だなんてずる賢いね君は、まあ出来るけどね」
「でしょう、だからお願いしたいんですよ
折敷七瀬、日高咲姫この2人が私たちの同好会に入るように誘導して下さい、ヒュデル」
「んー、そうだね私にはそれくらいしか出来ないよ、だからこそこれくらいの事なら手を貸させて貰うとしよう」
「有難うございます、やっぱりあなたならやってくれると思いましたよ」
「……しかしやるじゃ無いか、でも私にこれをお願いするという事は分かってい
るんだろう4人の記憶を取り戻す、という事の難しさがねぇ」
「分かっているつもりですよ、あなたが成し得なかった事をするという事ですからねそりゃあ難しいですよ、でもそれはあなただったからこそ出来なかったという事かも知れませんよ?
別にあなたが前に何をしたかななんて知りませんけどね……」
「随分と含んだような言い方じゃないか、まあ良しとしよう明日くらいにはこの同好会に入りたいと言って来るんじゃ無ないかな」
意味が分からない、神様がやるってどういう事?
てか響先輩が神様を従えちゃったよ、凄いじゃん……先輩
「という事だ奈帆、ヒュデルがやってくれるから解決だな」
「はい、そうですね」
で済まされる事でな無いでしょこれぇ。
聞きたい事いっぱいあるよ……っていう私の考えは当然の如く先輩には見破られていた。
「知りたいか?」
「へぇっ?あ、はい」
思わず変な声出しちゃったじゃん!さっきから先輩私の心の中読みすぎだと思うのだけれどもどうなんだろうか、そこは。
「簡単な事だよ、僕は2人をどうすればこの同好会に入るのかという事ばかり考えて居たんだけどあるときふと思い出したんだよ初めてヒュデルと話した時のことをね、そしたらなぜヒュデルはあんなにも凄い別空間を作ったのだろうか、時間をも操作してみせたのだろうか、またそんなにも凄いことができるのになぜ僕たちには頼んだのかという事に疑問を抱いたおそらくそれは君も変だと思ったんじゃないかな、だからそれは何故だろうか、と僕は考えたんだよそしたら案外簡単だったよ」
「へえ、そうなんですかでそれはどういう事だったんですか?」
「まずヒュデルが僕たちに対してお願いする時の態度、妙にへりくだっていなかったかい?自己紹介したりあの4人の過去のついて語るときは威勢が良かったのにお願いするときだけだ、それから別空間を作ったことも時間を操作したこともそれらは全て僕たちに見せつけるためだ、自分がこんなにも凄いことができるんだぞとね、だけれども僕たちにお願いをした、それは即ちこれだけは自分にもどうしようもなかったんだ、という事を示していると思ったんだそしてへりくだった言い方それらの事を考えるヒュデルはこう言いたかったんだと思うよ」
「私には凄いことができる、だけれども4人の記憶を取り戻すことだけは叶わなかった、だからもし君達が手伝ってくれるならもし困ったとき、できる事であれば手を貸すよ」
「と言いたかったんじゃ無いかなと思ってね奈帆も見てみてそう確信しただろう、君にそれを分からせるのが僕が君を連れてきた理由であり、ヒュデルにお願いをしようと思うに至った根拠だ、そして見事にヒュデルは協力してくれたというわけだね、ふうよかった良かったこれで解決だね」
「そんな事まで考えていたんですね、なんか先輩探偵みたいでしたね」
「いや、誰でもそんな事思いつくと思うんだけどな、僕にそういう思考力が足りないがために君には1週間も気まずい思いをさせてしまったみたいだね、それも今日でおしまいだよ明日からは2人も無事に入部して賑やかになってそんな事考えなくなるよ、それに……」
「それに?なんですか?」
「君はそんな事を考える必要もないくらいに可愛いと思うのだけれどもね……」
もう、なんでそんなこと言うのかな、先輩のこと、またしてもかっこいいと思っちゃうじゃないですか……
「そんな事を言われたら私もう先輩には敵わないですね」
そう言った途端先輩は何故か儚げな顔をする。
私はなんか変な事を言ったんだろうか、言っていないはずだよ?
敵わないって言っただけなのに……
そんな事を話して時間を潰した後、私達は部屋に戻り「今日は解散」と先輩が告げ、その日は解散となった。
次の日の部室にて
「失礼します、俺折敷七瀬と言いますこの同好会に入りたいんですけど、よいでしょうか」
「えーっと私は日高咲姫と言います私もこの同好会に入りたいのですが宜しいでしょうか」
ちゃんと、2人は入ってきた。
こうしてまず始めの目標である4人をこの同好会に入れる、というのは神様の力もあり達せされたのである。
これからは毎日この4人はこの部屋に集まることになるだろう、そしたら私はどんな事を話し、どんな事をを思うのだろうか……
ふと、折敷七瀬君と目があったような気がした。
* * *
「敵わないか……」
奈帆は何を思いこの言葉を発したのだろうか、僕には考えようにも考えられなかった。
どうしても昔のことを思い出してしまう、そう考えてみると、案外今の奈帆も"変わった子"ではないのかもしれない。
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