第7話 混沌(2)
中学生になって初めての成績通知表を見た時、愕然とした。
5段階評価の成績通知表には、3という数字がいくつも並んでいた。
幸いにも1、2という記載はなかったが、その代わりに5という数字も見当たらない。
父から何度も話された、「何事も一流を目指しなさい」という言葉を思い出した。
5段階評価のうち、3という成績は一流とは呼べないことくらい分かっていた。
父に成績通知表を見せたら叱られることは確定した。しかし、どのような形で叱られるのかは、検討がつかなかった。
仕事から帰宅して、疲れた表情でテレビを見ている父に、成績通知表を渡した。
成績通知表の詳細を見た父は、乱暴に成績通知表を放りなげた。
成績通知表を渡すだけでも、相当な勇気と覚悟が必要だったのに、通知表を投げられたことで、軽いパニック状態に陥ってしまった。
なにを言われるのか、手がとんでくるのか。
恐ろしくて、父の顔を見る事さえ出来なかった。
結局、手がとんでくることはなかったが、きつい言葉で2時間以上のお説教をされることとなった。
あまえてるからこんな成績になるんだ。
努力が足りない、調子に乗ってるんじゃない。
解離症の症状で、記憶が抜け落ちている為、全てを思い出す事は出来ないが、あまえるな、調子にのるなと言われたことはよく覚えている。
小学生の頃から、精神面で限界を感じていた私には、否定的な言葉が並ぶ長時間のお説教はひどく苦しいものだった。
途中、涙が止まらなくなってしまったが、父からは注意をされる羽目になった。
「こんな事で泣くんじゃない」
「お前が泣くと俺が悪いみたいじゃねぇか」
誰が悪いということはないと思うが、涙を抑えることが出来なかった。
しかし泣き続けると、父の怒りがおさまらないようで、否定的な言葉が増えていく。
心の中で、早く泣くのを止めなければ…と、自分に言い聞かせてみたものの、簡単に泣き止むことは出来ない。
最後は、
「話にならねぇ、あっち行け!」
と怒鳴られてお説教は終わった。
自室に戻ってもなお、涙が出続けた。
頑張って勉強をしても、成果に繋がらない。
成果が出なければ、父はこれからも私を怒鳴るだろう。
早々に布団に潜って、声を押し殺して泣いた。
それでもこんなのは序の口だ。
私がいるのは地獄の一丁目。言うなれば、地獄の始まりの合図でしかなかったのだ。
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