第3話 回想(2)
幼い私は知らなかったのだ。
良い子というものは、
都合のいい子になり得るということ。
怒られたくない。
殴られたくない。
その気持ちだけで、
両親の言いつけを厳守するように気をつけた。
でも…
幼い私は、
完璧な良い子になることが出来なかった。
食事の際、
食べるのが遅くて叱られる。
誤って、
食べ物をこぼしても叱られる。
頭を叩かれ、
足で蹴られることもあった。
恐怖からか、
人が手を上げると、
頭を守ろうとして、
両手で頭を覆うのが癖になっていた。
幼稚園に通うような幼い子どもが、
大人の顔色をうかがいながら生活をしている。
ワガママを言う事もない。
反論をすることもない。
ただひたすらに、
暴力を恐れて、
良い子を演じ続けた。
家の中は、
私にとって牢獄だった。
安心出来る場所はどこにもなかった。
今になって感じる。
全ては、
安心出来る場所がないことから始まったのだ。
幼少期の記憶は重大な役割を担っていて、
子どもの頃に安心出来る場所がないと、
大人になってから強い不安感に襲われることが多い。
例にもれず私も、
34歳を迎えた今もなお、
多くの強い不安感を抱え込み、
日々闘っている。
強烈なパニックに襲われ、
出先で動けなくなったこともある。
トラウマが多いこともあり、
解離症(軽度の多重人格)を併発。
今では、
同じ身体の中に、
3人ほどの人格が共存している。
両親が全ての原因ではない。
私自身の、
内気な性格が無関係とは言えないからだ。
ただ、
始まりやきっかけが暴力、暴言だったことは間違いない。
幼い頃、
叩かれたこと、
蹴られたこと。
何が悪くて叱られているのか分からなかったこと。
全て、
今の私を形成する材料となった。
幼稚園の頃。
はしゃいで走ったさんぽ道。
心の中では泣いていた。
怒らないでと、叫びながら。
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