百十五話:箱入り娘の加入
「は、初めまして!ぺオニア・アドルナートと申します!一生懸命、頑張ります!これからよろしくお願いします!」
ユミルド連合国から連れ帰ったぺオニアを全員に紹介する。
さすがに室内には入れなかったので庭先での顔合わせになった。
早速というか『塔』の中で一番コミュ力の高いミャオがぺオニアに近付いて行く。
「アタシはミャオッス!よろしくッス!」
「ッ!?」
ミャオが自己紹介をするとぺオニアの肩がプルプルと震えだした。
猫が嫌いなのか?とも思ったが――
「かわいいーッ!何ですか!?何なんですか!?この生き物は!喋ってますよ!?」
――突然、ぺオニアはミャオを片手で捕まえ、頭や顎を撫でまわし出す。
「なッ!?ゴロゴロ。やめるッス!ゴロゴロ。離すッスよ!」
「ハッ!ごめんなさい!つい!私、可愛いモノに目が無くて……」
「良いッスけど、もうやめるッスよ」
「……はい。ごめんなさい」
しょんぼりと肩を落とすぺオニア。
それを見たリヴィが口を開く。
「……たまにはいいんじゃない?……私にしてって言ってるくらいだし。」
「なッ!?なんで言うッスか!」
「……あ、ぺオニアさん。……私、リヴィ。……よろしく。」
「はい!よろしくお願いしますね!」
「え?無視ッスか!?」
そんなこんなで全員の自己紹介と顔合わせも終わった所で、次にぺオニアの住居である家を案内することにした。
特にこれといって特別な物はなく、リビング・トイレ・キッチンがあるだけの簡素な造りとなっている。
「こんな綺麗なお部屋まで使わせて頂いていいんですか?」
「ああ。ぺオニア用に建てた家だし、大きさ的に本宅に入れないからな」
「すみません……」
「謝らなくていいぞ。というか逆に一人別宅になるから、ごめんな」
「い、いえ!そんなっ!でも、嬉しいです。私のためにこんな……」
壁に手を付くぺオニアは頬を緩ませる。
喜んで貰えてよかった。
初めて入った時は少し狭いかな?と思ったが、一人で暮らすには丁度良い広さだろう。
ぺオニア用の家も案内し終わった所で本題へ入る。
「ぺオニア、ステータスを見せてくれ」
「ステータスですか?」
「ああ。いいか?」
「は、はい」
――――――――――――――――――――――――
【ステータス】
<名前>ぺオニア・アドルナート
<レベル>1/50
<種族>巨人
<性別>女
<職業>遊び人
<STR>C-:0
<VIT>D:0
<INT>D-:0
<RES>D-:0
<MEN>D:0
<AGI>D-:0
<DEX>D:0
<CRI>D-:0
<TEC>D+:0
<LUK>D-:0
残りポイント:10
【スキル】
下位:<遊び人><体術><鑑定>
――――――――――――――――――――――――
無い……か。
ぺオニアは魔道具が作れるし、直せると言っていた。
種族スキルか何かがあるかとも思ったんだが。
まあ、魔道具の件は追々だな。
今はそれどころではない。
転移スクロールがピンチなのだ。
「ど、どうですか?」
「レベル1とは、箱入り娘だったんだな」
「はい。小さな頃から、お勉強の毎日でした」
「なるほどな。んじゃあ、早速行くか」
「え?」
「行きたかったんだろ?ダンジョン」
「……はい!!」
俺はぺオニアを連れ、庭先に戻る。
そこにはミャオ・リヴィ・ヴィクトリア・ヘスス・カトル・ポル・フェイ・ロマーナ・バトラの姿があった。
バトラはギルドにある物と同じ水晶板を手に持っており、俺たちの元へと近付いてくる。
「タスク様。パーティを組む準備は出来てございます」
「ん。ありがと。……あ、待った。ぺオニア、冒険者のギルドカードって持ってる?」
「いえ。持ってないです」
ですよねー。
箱入り娘だった訳だし、持ってたとしても商人のギルドカードだろう。
「すまん。バトラ。用意してもらってるとこ悪いが、一回ギルドに行って、そのままダンジョンに行ってくる」
「畏まりました。お気をつけて」
「ん。ありがと」
こうしてバトラと別れた俺たち十人は、冒険者ギルドを目指して街中を歩く。
すると、『侵犯の塔』や俺たちの名前がチラホラと聞こえてきた。
「まだベルアナの一件から二週間も経ってないのに結構有名になったもんだな」
「そうッスね。なんかムズ痒いッス」
「タスクさんたちって本当に凄いんですね!」
「……でも、何が噂になってるんだろ?」
「わからないのである。タスクは拙僧たちの知らぬ所でも色々と動いているみたいであるからな」
「冒険者ギルド本部にも、ダンジョン関係の資料を送られたのですわよね?」
「まあな。氾濫の度に国や街が亡ぶとかあり得ねえだろ」
「それが普通なんデスけどね」
「でもさー、有名になるなら俺たちのパーティに加入者が来ても良くない?」
「そーだよね。ぜんぜん良い人こないんだよー?」
「そんなもんだ。ゆっくり頑張れ」
そうこう話していると、冒険者ギルドにたどり着いた。
ぺオニアが入れそうになかったので、みんなと一緒に外で待ってもらう事にして、俺一人でギルド内へと入る。
ここでも街中と同じように俺の方を見てヒソヒソと話声がしている中、赤いポニーテールを揺らしながら物凄い勢いで駆け寄ってくるフランカの姿が見えた。
「タスクさあああああん!」
「久しぶり。元気だった?」
「はい!いつも元気ですよ!」
「そりゃよかった」
「それで、今日はどういったご用件で?」
「新メンバーのギルドの登録と募集用紙の取り下げに来た」
「ッ!遊び人の方が見つかったんですか!?」
「ああ」
「おめでとうございます!」
「ありがと」
「でも、少し残念です。私も遊び人なので……誘ってほしかったです」
フランカは肩に垂れたポニーテールの先をクルクルといじりながら言う。
へえ、遊び人だったのか。
応募してくれれば良かったのに。
でも、まあ――。
「フランカは受付嬢の方が似合ってると思うぞ。それに俺がギルド登録した時からの付き合いだしな。フランカが居なくなったら困る」
「そ、そんな事言って!全然、来てくれないじゃないですか!この前来た時に魔石や素材をこまめに売りに来るって――」
「あ、そうだ。『侵犯の塔』はアドルナート商会と専属契約を結んだから、もう山のような魔石と素材の査定に追われなくて済むぞ」
「え?それって……もうギルドに来なくていいんじゃ……」
「まあ、そうなるな」
「……」
フランカは黙り込み、顔を真っ赤にして小刻みに肩を震わせる。
そして、スゥーっと大きく息を吸い込み、ギルド内全体に響き渡るような声で叫んだ。
「タスクさんの馬鹿アアアアアアアアアア!!」
それだけ言うとカウンターの奥へと走り去っていった。
同時に俺の背後から凄まじい気配を感じる。
咄嗟に振り返ると“ソレ”は居た。
――アイザックだ。
「あらぁん、タスクちゃん。女心がわからないだなんて、せっかくの色オトコが台無しねぇん」
「どうも。俺に女心とか言われても困る」
「ダメよぉん。ちゃーんと勉強しなきゃぁ……んねっ?」
いちいち顔を近付けるな。
香水の匂いがキツい。
「はい。話は変わるが、フランカに頼もうと思ってた新メンバーのギルド登録と募集用紙の取り消しを頼みたいんだがいいか?」
「いいわよぉん。ちょっと待っててねぇん」
十数分後、無事ぺオニアのギルドカードも出来上がり、クランメンバー募集用紙も取り下げた。
用事も終わった所で俺たちは冒険者ギルドを後にする。
その時、カウンターの奥からフランカが覗いていた。
今度何か買って持って遊びに来よう。
よし。
準備も出来た所で行くか。
『迸る球獣』へ。
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