七話:誘因(上)

 


 冒険者シーカーギルド二階の個室。



「じゃあ、改めて一人ずつ自己紹介よろしく」

「はいッス! じゃあ、アタシからいくッスね! 名前はミャオで獣人種の猫人族ッス! 職は盗賊シーフで索敵や罠の解除が大得意ッス! 戦闘は苦手ッスけど……よろしくお願いしますッス!」


 ミャオと名乗った彼女? は勢いよく手を挙げながら、ソファの上に立ち元気よく自己紹介する。


 彼女? の見た目はまんま猫。

 ソマリという種類の猫。

 それが二足歩行をして、人の言葉を喋っている。

 なんとも不思議な感覚だ。

 因みに身長は90センチ程と小さい。


「ありがと、ミャオ。それと、ステータスをもう一度見せて貰ってもいいかな?」

「いいッスよ!」


――――――――――――――――――――――――

【ステータス】

<名前>ミャオ

<レベル>18/50

<種族>猫人

<性別>女

<職業>盗賊


<STR>D:0

<VIT>D-:0

<INT>D-:0

<RES>D-:0

<MEN>D-:0

<AGI>B-:150

<DEX>C-:0

<CRI>D-:0

<TEC>D:0

<LUK>D-:0

残りポイント:30


【スキル】

下位:<盗賊><短剣術>

上位:<冒険術☆>

――――――――――――――――――――――――


 彼女? を採用しようとした理由はステータスが九割。


 IDO時代の獣人種は居たが人に近い見た目だった。

 それに比べミャオはどう見ても猫。


 が理由なのかは不明だが、下位職でありながら<AGI素早さ>と<DEX器用さ>の二つが初期でC-と飛びぬけて高い。

 普通の下位職はD+が複数あればいい方で、C-が一つあれば優秀だ。


 それに、彼女? は……それだけでは終わらない。


 星付きユニークスキルを持っているときたもんだ。


 星付きユニークスキルとは云わば生まれつきの唯一無二。

 ミャオ以外に誰も<冒険術☆>というスキルを持っている者はいないということに他ならない。


 IDO時代のスキルは全て頭に入っている俺でも<冒険術☆>というスキルを見た事は一度もないので、この世界には俺の知らない職業やスキルが存在していると確定した。


 ハハハ。

 テンション上がるわ。


 求めていた職ではないが、そんな事は些細な事だ。

 ミャオを採用しない奴は頭おかしい。


 よし、次。



 俺はミャオの隣に座っている子に視線を移す。

 するとビクッと肩を竦めて小さくなりながら口を開いた。


「……リヴィ……です。……魔法使いウィザードで……戦うのは苦手です。……頑張ります。」

 

 なんて? 声が小さい。

 身長も130センチ程と小さい。

 色々と小さい。


 彼女の見た目は褐色の肌。

 腰まで伸びた白髪に白睫毛。

 赤く輝く瞳。

 ダークエルフのアルビノ……か?


 本来のダークエルフは青い肌、深緑の髪、深緑の瞳をしていたはずだが……まあ、そんなこと今はどうでもいい。


「ステータスを出してもらっていいか?」

「……はい。」


――――――――――――――――――――――――

【ステータス】

<名前>リヴィ

<レベル>8/50

<種族>ダークエルフ

<性別>女

<職業>魔法使い


<STR>D-:0

<VIT>D-:0

<INT>C-:0

<RES>D+:0

<MEN>D:0

<AGI>D-:0

<DEX>D-:0

<CRI>D-:0

<TEC>D-:0

<LUK>D:0

残りポイント:80


【スキル】

下位:<風属性魔法><土属性魔法><無属性魔法>

――――――――――――――――――――――――


 もちろん、ステータスで決めた。


 は? 特段良いものはないって?


 そんなことはない。

 だ。


 <無属性魔法>。

 これ、最強。

 異論は認めない。


 MPマジック・ポイントを消費して、ただの魔力の塊を放つだけの一見使えそうにない<無属性魔法>だが、IDO時代に<無属性魔法>を持ったキャラクターが出来上がるまでデータを消しては作り直す作業、通称リセットマラソンを延々と繰り返した猛者が存在したレベルで大当たりだ。


 リセットマラソンをする理由だが、IDOにはスキルを習得するための能力スキルスクロールがあるのだが、<無属性魔法>の能力スクロールが存在していなかった。


 そんなスキルが使えない訳がない。

 因みにかつての友人もリセットマラソンをした猛者だ。

 

 今回、魔法使いウィザードはリヴィを含め、八人面接したが<無属性魔法>を持っていたのはリヴィだけだった。


 もしも持ってる人が居なければ、今回の面接で魔法使いウィザードを採用することはなかっただろう。


 持っててくれて……ありがとう。



「それじゃ、最後」

「拙僧はヘスス。職は治癒師ヒーラーである」

 

 うん。

 デカい。

 身長が二メートル超えてる。

 隣に座っているリヴィが小動物に見えてくる。


 彼の見た目は光が反射するほどのスキンヘッド。

 黒い法衣の袖口から覗く手首にはテカテカと光る黒鱗が見えている。


「ステータスいいか?」


――――――――――――――――――――――――

【ステータス】

<名前>ヘスス

<レベル>29/50

<種族>竜人

<性別>男

<職業>治癒士


<STR>C-:0

<VIT>D:0

<INT>B:250

<RES>D+:0

<MEN>D+:0

<AGI>D:0

<DEX>D:0

<CRI>D+:0

<TEC>D:0

<LUK>D:0

残りポイント:40


【スキル】

下位:<闇属性魔法><闇属性適正><治癒士>

――――――――――――――――――――――――


 ザ・化け物。

 D-が一個もない。


 それに治癒師ヒーラーで<闇属性魔法>持ちで<闇属性適正>とか逸材すぎて笑ってしまう。

 因みに<適正>系の能力スクロールも存在していない。

 

 正直、ヘススではなく他の治癒師ヒーラーを採用しようかと思っていたのだが、“とある最上位職”を思い出し当初の計画を変更してまで採用した。


 高いステータスに良いスキルを持っているヘススを俺はどうしても見逃せなかったのだ。


「改めて、三人ともよろしく。俺はタスクだ」

「ワシはゼムじゃ。今はアタッカーやっとるが本職は鍛冶師スミスじゃ」

「はいっス! よろしくお願いするッス!」

「……お願いします。」

「よろしくである」


 軽い挨拶も終わったところで俺は三人の方を真っ直ぐに見て口を開く。


「最初に言っておくな。正式に加入した場合、気軽に抜けてもらっては困る。だから今から話すことに納得できなかったり、絶対に無理だと思ったら遠慮なく辞退してくれ。勘違いはしてほしくはないんだが、俺はこの人選に妥協は一切ない。それだけは理解してくれ」


 三人はそれぞれ元気に、控えめに、無表情で頷く。

 それを確認した俺は言葉を続けた。


「俺たちはいずれ難易度十等級のダンジョンを攻略する」

「「「ッ!?」」」


 俺の言葉を聞いた三人は完全にフリーズしていたが一斉に口を開く。


「絶対に無理ッスよ!!」

「……怖いです。」

「正気であるか?」

「俺は正気だぞ。だがミャオの言う通りじゃ絶対に無理だ。だから――」


 俺はそう言いながらインベントリからスクロールを六巻取り出し、ミャオの前に二巻、リヴィの前に二巻、ヘススの前に二巻と置いていく。


「俺のパーティに正式加入した場合、レベルを上げた後にこの昇格スクロールを使って上位職に、そしてゆくゆくは最上位職に昇格してもらう。勝手ながら昇格先は俺が選んだから、三人に昇格先の選択肢が無い。そこだけは許容してくれ」


 俺は上位職の昇格スクロールを人差し指でさした後、最上位職のスクロールを指さしながら俺のステータスを表示させる。


 ――レベル上限100。


 それを見たミャオはポカンと口を開けて驚愕し、リヴィは信じられない物を見たかのように青ざめ、ヘススは閉じていた片目を開き訝しげな表情を浮かべてる。

 


 そんな中、俺は話を続ける。


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