05 α

 殺そうとした瞬間に、死んだ。


 月に照らされた、ふたり。どうでもいい、インフラハッカー。


 なぜ。


 ベータが。彼女が、殺したのか。


 屋上から出てきたところを、自分が殺そうと思っていたのに。


 車に戻らず、端末から、無線の呼び出しを使う。彼女は、車に戻らないと無線が使えない。自分は違う。


『こちらベータ』


「裏口と上は、俺の担当だった」


『もうしわけありません。つい手が』


 お前が手を下すほどの奴でも、なかったのに。出かかった言葉を、かろうじて呑み込んだ。たかが、町ひとつ、地図から消えるだけ。


「よくやった。おまえのおかげで、町がひとつ、救われたぞ」


『ありがとう』


 無線の先。


 ちょっと、残念そうな、声。


『三年目だね』


「ああ。そうだな」


『ちょっと待っててね』


 無線が、切れた。


 まずいな。車に戻らないと。

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