第11話
雑居ビルの3階。『猫の住処』と書かれた看板の店に入った。
店の中にはセピア色の猫の写真やステンドガラスの照明が飾られている。
OLらしき女性とスーツ姿の男性がカウンターでカクテルを呑んでおり、タキシード姿の中年男性がこちらに気付き会釈をしてきた。
「お二人様ですね。カウンターとテーブルどちらになさいますか?」
バルタン先輩が慌てて「いや、4人です。あとで2人来ますので。」と伝える。律子と恋人同士だと勘違いされたと思ったのか顔が真っ赤になっていた。
ちょうど、そのタイミングで店の扉が開き、大沢社長と田所勇樹が入ってきた。
大沢社長は、一目で高級品だとわかる薄手のカーデガンを羽織っていた。スーツを脱ぐと40代半ばとは思えないほど若々しい。
対する田所勇樹は首回りの伸びたTシャツ。しかも、アニメの絵が描かれている。足元はサンダルだ。
「社長、こんなちゃんとした店なら言ってくださいよ。居酒屋だと思ってましたよ。」
大沢は笑いながら「個室があるから大丈夫だ。」と伝えタキシードの男性に目で合図をした。
本来なら恋人と2人を想定しているのだろう4人が何とか入れる程度の小さな個室に入った。
「飲み物は4人分、適当に薄めのものを用意してくれ。食べ物はつまみ程度でいいから。」
大沢はタキシードの男性にそう伝えた。その店員の背中を見送ると律子は前のめりになり大沢を見つめた。
「社長、私があの女の霊を見るとなぜわかったのですか?」
「えっ、どういうことですか?」
事情を知らない勇樹は驚いて大きな声を出す。
「いや、立花くんが霊を見るまでは確信できなかったが、これですべてわかったよ。霊の正体。なぜ、クラス全員が霊を信じ込んだのか。3名もの死者が出るほどの呪いの理由が。」
「私たちにもわかるように説明してくださいね。」
大沢は口元だけ笑顔を見せるが目は笑っていなかった。
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