1話 こんなことってありか?
人は他人に対して自分の評価を押し付ける。
その人の内面を掘り下げず外見や結果でその人に対して不当な評価を下しあろう事かその評価を期待するのだ。
例えば毎回学年首席を取っている人物が居たとしよう。その人物に対して周りは『すごい!』だとか『やっぱり天才じゃん!』だとか。
その人物に対しての評価を結果そのものだけを見て決めつける。その結果の「過程」まで大半は見ようとしない。
俺が最も嫌う他人に対しての評価の仕方だ。
俺も一時期その評価をして人を傷付けたことがある。だがそれを本人に否定され、説教をくらった。
その人物が━━━━━━━━━
「邪魔よ!!!」
「なんだよ!前回テストで俺に負けただろ口答えすんのか!神崎!」
「は、はぁ?前々回は私が勝ってますけど?そもそも私とあなた勝負は五分五分でしょ?その点においては対等なんですけど!」
「ぐぬぅ!」
そう、神崎 七海である。彼女は俺に対して大事なことを教えてくれた人物であり、俺が最も対抗心を燃やしている相手である。小学生の頃に彼女に対して対抗心を燃やしてから高校1年生まで血のにじむような努力を重ね彼女と勝負をしている。
勝負を重ねていくうちに互いに罵りあったりして、毎日喧嘩している。
おっと、神崎 七海がどんな人かって?
茶色のショートボブ。整った鼻口。くりりとした大きな目。まぁ、所謂美人ですわ。時折見せる笑顔は俺ですらクラクラくる。だから余計腹立つ。
一方俺は.....学力こそ互角とは言うものの顔は平凡だし、運動はまぁそこそこ。彼女には運動以外負けてしまう。
そんな、彼女とルーティンである罵りあいをし今日もいつものように帰宅した。
幼い頃に母を亡くし今は親父と二人暮しをしている。男で1つで俺を育ててくれた事には凄い感謝をしている。
「ただいまー」
自宅に帰宅し玄関で靴を脱ぎながら帰宅の挨拶をするとリビングにいるであろう親父から声がかかった。
「司ー、大事な話があるーちょっとこいー」
親父に呼ばれて俺は2階にある自分の部屋へスクールバッグをベットの上に放り投げた後羽織っていたブレザーをハンガーにかけ、1階の親父のいるリビングへ足を運んだ。
リビングに入ると、右手にあるソファーと長方形型の長いテーブルの奥に正座して親父が座っていた。
高校生の親にしてはクールな顔立ちで皺ひとつない顔立ちは若い頃イケメンだったんだなと思わせる雰囲気が漂っている。
俺は親父の手前側ソファーを背もたれにして胡座をかいた。
「話って?」
俺がそう切り出すと、親父は覚悟を決めたかの様な面持ちで口を開いた。
「父さんな、再婚することになった。」
あまりに突然な報告に俺は直ぐに返事は出来なかった。幼少期の頃に母親が亡くなった。再婚すること自体に反対はない。今まで、男手1つで育ててきてくれたんだ。親父の意見に反対はない。たで、突然過ぎて俺の思考回路をもってしてでも処理が追いつかなかったのだ。
そんな俺を察したのか親父が続けて口を開く。
「突然の報告ですまない。前々からお付き合いしていたんだが、この前俺がプロポーズして受け入れてもらった。」
親父から告げられる言葉に俺は必死で頭を回した。
「そっか、別に俺は反対しないよ。母さんが亡くなってもう10年以上でし、親父も男手1つで俺を育ててきてくれたんだ。親父の意見を尊重するよ。」
そう言うと親父は目にうっすら涙を浮かべてぐずっと鼻を啜った。
「ありがとう。本当にありがとう。母さんが亡くなって俺はどうしたらいいか分からなかったんだ。司もまだ小さいし俺は司に幸せになってもらいたいと思って必死に働いて育ててきた。司がそう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう。」
そう語られる言葉は親父が今まで溜め込んできた不安が滲み出ていた。
俺の目にもうっすら涙が浮かんでいるのが自分でもわかった。
「それでな、向こうにも同い年の娘さんがいるんだ。」
は?え?
「えーと、ってことは俺の妹?姉?になるってことか?」
「そう、これは何回も話し合った。俺は司を信用しているし大丈夫だろうってことで来週から向こうがいらっしゃる。」
突然の事でまた俺の頭は異常なまでの回転をしオーバーヒートした。
「は、はぁ。」
必死に紡いだ言葉はこれが限界だった。
親父の衝撃の報告から1週間後の土曜日。
俺は朝からソワソワしていた。当たり前だろ?親父の再婚相手つまりは俺の母親になる人が今から来る。ましてや連れ子がいるんだ。ソワソワしちゃうよ。
時刻は午前11時。相手さんが来る時間だ。
━━━━━━ピンポーン
自宅のインターホンがなった。ついにきた。
俺は期待と不安な心境で親父と一緒に玄関に足を進めた。
「はい、今出ます。」
親父の客人を招き入れる言葉と共に開けられた玄関の先にいたのは、これまで嫌なまでに見てきたその天使のような顔と、20代にも見えるその大人びた雰囲気を纏った2人の女性だった。
結論から言おう。継母の名前は「神崎 姫子(かんざき ひめこ)さん。そして隣にいたのは....
神崎 七海 だった。
さぁ時を戻そう。俺が継母とその連れ子神崎 七海と対面する瞬間に。
俺は絶句した。だってそうだろう?普段学校で言い争っているライバルである神崎が立っているんだ。
俺はまたもやその情報量の多さに脳がオーバーヒートしてしまった。
「こんなことってありか?」
新しい母親とその家族に対しての第一声がオーバーヒートした脳から必死に炙り出した失礼極まりない言葉だった。
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