第4話 二刀流


扉の先を見ると、部屋内部は円柱状に構成されており、壁の支柱にかけられた松明の青白い炎が、部屋を十分に明るく照らしていた。


そして、俺たちがそこで見た光景は悲惨なものだった。


「あぁ……!」


イリスがその光景を見て顔を青ざめる


俺たちより先行していた15人の鎧を着た調査隊が、その殆どが血を流しながら地に伏していたのだ。

そしてその中央には巨大な大剣を持ち、全身毛むくじゃらで頭にな二本ツノが生えた、3メートル以上はある怪物が凄まじい咆哮を上げていた。


それをみた俺はまずい、と直感で理解する。奴は俺が見た中でも最上級クラスの化け物だ。

……能力を使えば、もしかしたら勝てるかもしれないが…調査隊を守りながらとなれば話は別だ。


目の前で消えかけている命を放っておく事はできない。だが…俺たちが突撃しても全員が生きて帰ってこれる保証は……


そう考えているうちにも、怪物はその手に持った巨大な大剣を調査隊に向かって振り上げていた。


「ッ…!!危ないっ…!!!」


「!?イリス!…ッ、くそっ!」


咄嗟に怪物に向かって駆け出すイリス。それに見て俺は、もうどうにでもなれ!と思いながら後を追う。


「やあぁぁ!!!」


イリスは緑色の光を纏った高速三連突き技『ペネトレイター』を怪物の背中に放ち、怪物の動きを止めた。

しかしダメージをあまり受けていない様子で、背後をむり向いた怪物は、イリスの方を視認すると、そのまま大剣をイリスに向かって振るう。


「っ…!はあぁぁぁ!!」


嫌な予感がした俺は、すぐさま能力を発動し、身体能力を飛躍的に強化する。そしてイリスに迫りくるその攻撃を間一髪で剣で受け止めて、なんとか受け流す。


「っ…くそっ…!」


ここからどうする…!能力を発動させても全員を退避させる時間を作れるか。…いや、そんな暇はない。横目でしか見ていないが、倒れている調査隊たちが流している血はかなりの量だ。

速く治療しないと命の危険があるのは間違いないだろう。


ーーならーー無理をしてでもやるしかない。

そう決断した俺はイリスに向かって叫ぶ。


「イリス!「アレ」を使う、だから5秒だけ時間をくれ!」


「!?でも「アレ」は……ッ…わかった!」


イリスは一瞬躊躇するが、この緊急事態に反論など言っていらないことを理解すると、了解してくれる。

そして、イリスが怪物の前に駆け出していき、時間を稼いでくれている俺は、焦りを抑えつつ、懐からと「あるアイテム」を収納している、手のひらサイズの魔道具を取り出す。


「よし…!いいぞ!」


見るとイリスが怪物の攻撃を紙一重で交わし、なんとか時間を稼いでくれていた。

俺が魔道具のスイッチを押し、突撃すると同時に、すれ違うようにイリスは後方に下がる。

怪物が俺目掛けて振るわれた大剣を、右手の黒剣で受け流す。そして収納ボックスから魔法陣が展開され、俺の左手に「白い剣」が召喚される。その剣を、俺は怪物のガラ空きの胴体に全力の上段斬りを放った。


その攻撃を受けると、怪物が忌々しそうな声を漏らし、まだ意識のあったであろう調査隊から驚きのような声が聞こえた。


一瞬だけ目を閉じ、意識を集中させてる。そして俺はその言葉を静かに、しかし力強く発する。


「『スターバースト・クェーサー』…!!」


その瞬間、黒と白の剣を銀色に輝かせ、究極の技を解き放つ。

それはどのソードアビリティよりも一層眩い光、威力をもった技。

「スターダスト・クェーサー』

それは技の名の如く1撃1撃が眩い流星のが流れ、爆発し、一瞬の間に大量の星の軌跡の生み出す17連撃技。現状での最高威力の技を持って相手を穿つ。

だが、まだこの技は未調整で17連撃目の技が出せない。それにこの攻撃中は俺は相手の攻撃を防ぐ事はできない。自分が倒れる前に倒す、攻撃一辺倒の大技だ。


相手もただ攻撃を受けているだけでなく、その大剣を振りかぶり何度も反撃をしてくる。俺はそれを連撃中の剣撃を利用して何とかうけながし、致命傷だけは避けて攻撃を続ける。

…だが、致命傷を避けたと言っても受けた傷と血の量はかなりの量だ、口からは血が溢れ、貧血で多少目眩もする。

だが、ここで倒れるわけにはいかない…!


ーーーだから、もっと-もっと速くーー!!


能力を発動し、強化に強化を重ね、更に加速する。1秒にも満たない時間の間に7撃ーー10撃ーー15撃目と、更に加速した星の爆発(スターバースト)を怪物に向けて打ち放つ。


そして現状最後の16連撃目はワンテンポ遅れる左の上段斬りだ。

同時に怪物の鉈を振りかぶった最後の攻撃が迫ってくる。これはーー防げない。

そう悟った俺は相打ちを覚悟し、しかし次の瞬間、俺はその光景に目を見開いた。

誰かがーーいや、調査隊のリーダーだったあの男が、血塗れの慢心状態にもか変わらず怪物に切り掛かったのだ。

攻撃を受けた怪物は振り被っていた剣を一瞬ーーほんの一瞬だけピタリと止めた。


「っ…!!」


その一瞬のチャンスを得た俺は、最後の力を振り絞り、16連撃目の上段斬りを放った。


「ぜあぁぁぁ!!!!」


そして最後の一撃が決まり、静寂が訪れる。


最後に立っていたのはーー俺だった。


ズゥン…と怪物は低い音を立てて地面に倒れた。……恐らく倒せたのだろう。


そう理解した俺は気が抜けてふらり、と重心が傾く。立て直そうともしたが、大量に血を流した影響か、体は思ったように動かせず地面に倒れ、俺の視界は次第にブラックアウトしていった。

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叙唱されし者スピンオフ【黒と白の剣士】 @togami922

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