第3話 ソードアビリティ
迷宮区に入って2時間後
迷宮の中はかなり俺たちが予想していたよりもかなり入り組んでいた。
果てしなく続く迷路を、俺たちは時間をかけて迷わないように気をつけながら進んでいった。
「ふっ…!」
そして現在、俺たちは迷宮に入って12度目の戦闘を行なっていた。剣と剣がぶつかり合う音が通路に響き渡る。
今目の前にいる敵は、骨と鎧で纏われた…一般的にはスケルトンと言われるモンスターだ。
道中にも何度か相手をしているが、片手に剣、もう片方の手に盾を持ち、アンデッドの割に戦闘能力が高く、こちらの攻撃を防いでくるためかなり厄介だ。
…少なくとも1人で相手をしていたならば、それなりの時間と労力を消費していただろう。
だが、今ここには頼りになる相棒がいる。
「イリス、次で決めるぞ!」
「うん!了解!」
後方にいるイリスに合図を送ると、俺は黒色の片手剣を構えて、スケルトンに正面から突撃する。
そして予想通りスケルトンは盾を前に出して俺の攻撃を防ごうとしてくる。
「はぁっ!」
俺は右手に握る黒色の剣を下斜めに構え、刀身を青色の光で輝かせる。そのまま身体能力で引き上げられたスピードと威力で切り上げるようにして相手の盾を弾き上げる。
単発技『スラント』だ。
「イリス、チェンジ!」
その言葉と共に俺は体を横に逸らす。同時に数瞬前に自分がいた場所からイリスが突撃する。
「やあぁ!!」
そして、スケルトンのガラ空きの懐に黄色の光を纏った3連撃を放った。
その攻撃を放った後には三角形の軌跡が飛散する。
片手剣3連撃技、『バーチカル・トライアングル』だ。
スケルトンはその剣撃を受けた箇所からバラバラと体を崩壊させていく。
戦闘が終わったのを確認した俺たちは納刀し、ふう、とため息を吐く。
「これこれ2時間…だいぶ奥の方まできたんじゃないか?」
「そうだね…歩きながら作ったマップの方もだいぶ埋まってきたし。多分そろそろ奥が見えてきそうだけど…」
そう言ってイリスは掌サイズの機械のスイッチを入れて、空間にこの三次元状の迷宮のマップを展開させる。
「『ウェポンズアビリティ』といい、この機械といい、改めて考えると、やっぱり凄いな…」
「そう?僕としてはまだまだ改良の余地はあるとおもうけど」
俺がそういうとイリスはあっけらかんとした様子で答える。
そう、この機械を作ったのは他でもないイリスだ。元々彼女は物を作るのが好きで、俺とイリスが先ほど放ったスラントやバーチカル・トライアングルといった技……通称『ソードアビリティ』という機能を実装したのも彼女だ。これを使うことで、身体強化の魔法と同等以上の強化と、技の威力を上昇させることができるのだ。
ただ、急激に身体強化を施す反動で、技の使用後は1秒以上の硬直が発生するデメリットがある。彼女としてはそう言った問題が許せないのかもしれない。
「それにアップデートするにしても貴重な鉱石とかアイテムが必要なのが欠点なんだよねぇ…」
イリスの言う通り、優れた機械を作るにはそれなりに貴重な素材が必要だ。彼女の場合、一度手に入れた素材は二度と取りに行かなくても済むのだが、見たこともない素材は一度は取りに行かないとダメなのだ。その為に場合によってはかなり危険な区域に行くこともある。
「でも、アイテムを作るのは楽しいし…何よりレイジの役に立ちたいからね」
「……ありがとな」
そう言いいながら彼女は笑顔を見せる。その笑顔をみた俺は何故か少し気恥ずかしくなりながらもお礼を言う。
そして、そういえば、とふと思い出したかように話を続ける
「ソードアビリティといえば、「アレ」はまだ使ってないよね?」
アレ、という表現に一つの単語が思い浮かぶ。
「「アレ」はまだ調整ができてないから、あまり多用しないようにね。使用後のデメリットがまだ酷いんだから」
それを聞いてなるほど、と理解する
「…了解」
そう言いなが少しずつ通路の先へ進む俺たち。
そして、迷宮を巡りに巡って数時間、次第に分かれ道は少なくなり、最終的に1本の通路に繋がっていく。恐らくこの先が迷宮の最奥なのだろう。
俺たちが通路を進むと、遠くの先に大きな扉が見えてくる。
「あそこが最後の部屋みたいだな…」
「だね。明らかに何かありますよって感じの大きな扉だよね。それに、あーいう場所って大抵強い魔獣とかと一緒にお宝があるんだよね」
「はは、確かにそれはあり得るな。お約束ってやつか」
そんな会話をしていると、通路の先の奥の扉から悲鳴が響き渡る。
それが聞こえた瞬間、俺たちは再び扉の方を見る。
扉の前には人はいないがそれは人が通れる程には開いていた。
「まさか…」
瞬間的に嫌な予感がした。迷宮を探索していた際、俺たちは一度も先に迷宮区に入って行った冒険者たちを見かけなかった。途中で諦めて帰ったのかとも思ったが、扉の向こうから聞こえてくる悲鳴はつまり……
「急ぐぞ!イリス」
「ッ、うん!」
合図をすると、俺たちは扉の方に駆け出す。
そしてたどり着いた扉の先に待っていたものはーー
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