第2話 迷宮の入り口にて

 家を発ってから数日後、俺とイリスは依頼にあった迷宮区の入り口にやってきていた。

その場所は、町からはかなり離れた森の中に存在していたためか、辺りには人気が一切なかった。


「へぇー、ここが依頼されてた場所かぁ」


 そう言って物珍しそうに当たりをキョロキョロと見渡すイリス。


「見るからにも、かなり古そうな遺跡だね。さーて、いいものがみつかるといいなぁ」


「…張り切るのはいいが、寄り道はほどほどにな?」


 早く中に行きたそうなイリスを見て、苦笑いしつつ忠告をする。彼女の場合自由にさせると迷宮区の端から端まで探索しかねない…

そんな会話をしていると突然背後の方から声をかけられる。


「うん?先客か…」


 振り返ると鈍色の鎧を纏った15人ほどの団体がこちらにやってきていた。

そのうちのリーダーらしき厳つい男ががこちらに話しかけてくる。


「俺らは国の調査隊だ。調査の邪魔だからあんたらはとっとと帰りな」


 そう言ってリーダーらしき男がぶっきらぼうな態度で俺たちを帰らせようとしてくる。

…しかしこちらとしても素直にはいとは言えるわけがなかった。


「…悪いが俺らも群の依頼で依頼されてるもんでな。ある程度の成果を出さないと帰れないんだ」


 群、という言葉を聞いたリーダーらしき人物は嫌そうな表情をし小さく舌打ちをした。

その反応をみて、なるほどな…と内心で理解し、続けて次の言葉を放ってみる


「そうだ、折角なら一緒に行くか?ダンジョンの攻略は人が多い方がいいだろ」


「……いや、悪いが、俺たちは別行動させてもらう」


 そういうとリーダーらしき人物は、後ろの仲間らを連れて迷宮区の方に行ってしまった。

そんな彼らの姿が見えなくなった頃にイリスがぽつりと呟く。


「なんというか…見た目はしっかりしてるのに、雰囲気の悪い人たちだったね…」


「……恐らくだが彼らは調査隊じゃないだろう。野良の賊か、冒険者と言ったところか」


こういう危険区域は国や郡が立ち入り規制が入りやすい、だから国直属の調査隊という嘘を吐いたのだろう。

 しかし、こちらとしては彼らの邪魔をするつもりはない。あくまで俺たちの目的は遺跡内部の調査なのだ。……しかし、向こうから敵意を持って襲ってきたなら…こちらもそれなりの対応をしよう。


「……さてと、俺たちもちゃんと仕事をしないとな」


「ん、そうだね。そうと決まれば、あの人たちよりも早くお宝を見つけないとね!」


「いや…だから俺たちはお宝が目的じゃないって。そもそもあるかどうかすらわからないのに…」


「もー、少しくらい期待してもいいでしょ!」


そんなイリスの苦言を軽く受け流しつつ、俺たちも迷宮の中に入っていくのだった。

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