第21話 カシスオレンジ
「課長代行、おつかれさまー」
楓が明日香を慰労に飲みに連れてきていた。
「ほんとだよ~。」
ぐったり明日香くん。慣れない仕事を押し付けられたらそりゃぐったりするわね。
「でも課長、無事戻ってきてよかったね~。」
「なんとか1日で復活する辺り、課長すごいよね。」
手元には先付のひじきの煮物。
明日香は焼酎の熱燗、楓はウーロンハイである。
「くあ~っ。酒が美味しいなあ。」
「おっさん臭いわよ、明日香。」
「ごめんなさいね~、まじありえないよ所長。急に電話してきてさ~、私に課長代行任せてくるのよ~?おかしいと思わない~?」
「それだけ信頼されてるのよ。」
「信頼~?」
「そ。貴方がいるから転生課が回ってるのよ。」
「え~?そうかな~?」
「そうよ、貴方こそ転生課のエースよ。」
「そ、そうかな~?ふへへ。そうよね。課長がいなかったら私しか代わりはいないわよね!」
明日香くん、チョロインですねえ。
「こんばんわ、如月さん、隣いいですか?」
「え…」
転生課の職員、伊藤君だった。いつも明日香が担当する転生人の調書を差し入れてくれる仕事をしてくれている。
「このたびは、課長代行お疲れ様でした。見事な仕事っぷりでしたよ。次期課長はやはり如月さんですね。」
伊藤君は黒髪短髪の年下イケメンである。
「前々からいつも一緒に仕事をしていましたので、今日はどうしても一緒に飲みたくてついてきちゃいました。」
「ちょちょちょちょ、伊藤君、何急に!」
完全に酔いとは別の赤みがさす明日香。
なんで私はこんなときに焼酎なんて飲んでるんだ!
すいませーん、カシスオレンジください~。
「私は如月さんを尊敬しています。以前私の走り書きの調書を渡した時も、嫌な顔一つせず使ってくださいました。」
「そりゃ、急に出現してきた転生者の調書なんて、普通ならすぐに出ないもん、しょうがないよ!」
「仕事面でもプライベートでも如月さんを愛しています。付き合ってください。」
「ぶふぉ!!!」
楓と明日香は同時に飲み物を吹いた。
「ま、マジで言ってんの?」
「ホントですよ。」
明日香の春である。
「か、、、かんがえさせて…」
顔は真っ赤である。
「もちろん、ダメでも、今までよりさらに正しく、詳しい調書を送らせていただきます。」
そりゃ仕事なんだからしっかりしてほしいが、、、。
職場内恋愛か~。
みんなにからかわれないかな?
「大丈夫ですよ。私が守ってみせます。」
すっかり酔いの醒めた明日香は帰ることにした。
このままここにいたら押しに負けてここで付き合ってしまいそうだ。
素面で考えたい。
「伊藤君。今日は帰るよ。返事は後日するね。」
「はい、待っていますね。」
伊藤君は、イケメンだしいい子だけど、今までそんな風に見たことなかったなあ。
年下すぎて。
そっか~。こんなことあるんだな~。
ぼへ~と考える明日香であった。
続く。
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