第20話 課長代行
「ただいま~。」
有給休暇明けの二人が転生課に戻ってきた。朝から元気な卯月が駆け寄ってくる。
「んあ~。先輩~。待ってたっすよ~。」
「ん?ああ、お土産?はい、ひよこまんじゅう」
卯月の口に向けて饅頭をシュート!
「モグモグ。違うっス。大変だったんすよ~。」
「なにしたの?」
「僕じゃないっスよ!お二人がいない間、上の視察があったっス。」
「あちゃー。なにそれ、抜き打ち?ひどいね」
「そうなんすよ!仕事上に特に大きな指摘はなかったんすけど。」
「じゃあ、いいじゃない?」
「課長が心労で倒れたっス!」
「だから課長がいないのか~!!!!!」
課長がいない。
これは大ごとである。
なぜなら二番手である明日香が指揮をとらなきゃならないからである。
prrrrr…
あ、内線だ
「はい、こちら転生課、如月明日香です。」
「あ、如月君。今日、課長いないから、君が課長代行として頑張ってくれたまえ。」
「はい、かしこまりました。」
がちゃ。
それだけかよおおおおおお!
もっとなんかあるだろおおおお!
せめて名乗れよ!ああ、わかるよ!今のは所長だよ!
もっとなんかあるだろー!引継ぎとか!課長が何してたかなんてさっぱり知らねえよォ!!!
「と、とりあえず朝礼っスね。」
朝礼ってなにすんだっけな!
「全員しゅうごー!」
課の全職員48人が明日香のもとに集まる。
「えーっと、課長に何があったか知りませんが、今日一日、課長代行を務めます。よろしくお願いいたします。」
「ええ、そうなの!?」
「課長大丈夫?」
次々に声が上がる。
ぶっちゃけ私も詳しいことは知らない。
「な、なんとか、私を助けてください。><」
わたわたする私。
なんて情けない。
「とりあえず、通常営業しましょうか。はいはい、解散~。」
楓が助け船を出して解散する。
「ありがとう。不安すぎるよ~。」
「まあ、一日くらいならなんとかなるでしょう。」
「課長代行、転生先の許可サインくださーい。」
「課長代行、転生先からお電話です」
などなど、開始してみたら、やはり超多忙だった。
課長になんかなりたくないな~。
課長、よくこんな仕事量こなせるよな~。
「ふむ、ここはどこだ?」
課長は多岐にわたる事務仕事をした上に、目の前にいるような日本の大物有名人なども担当する。
「ようこそ、異世界転生課です。お望みとあらばどんな世界にだって転生させちゃいます!さあ、多部竜胆様のご要望はどんな世界ですか?」
まさかの元総理大臣が今日このタイミングでくるとは思わなかった。
「転生だと?私には日本をよくする義務がある。帰らせてもらうぞ。」
「残念ながら多部さまは、先ほど火葬がお済です。もう戻れません。」
「な、なんだと…。これは夢か…。いや、違うようだ。なんとなく死んだことが理解できる。そうか、私は志半ばにして死んだのか。」
生前、もうずっと体調悪そうだったしな~。
「ならば、転生?を受け入れよう。新たな人生を送ろうではないですか。」
「ご理解早くて助かります。多部さまは、多くの仕事をしてまいりましたので、記憶も容姿もすべてリセットして、異世界へ転生していただくのがよいと思われます。」
「そうか。よいようにしてくれ。」
「多部さまの転生先は「ヒッピャクリフ」。1000年の平和を実現した大帝国に生まれ落ちますなります。スキルは【無限収納】、【言語理解】、【算術】です。」
「ふむ、ではその地でまた、民のために生きるか。」
桜吹雪に包まれて消えていく多部さま。
「課長代行、領収書にサインお願いします。」
「課長代行、会議室の使用許可お願いします。」
「課長代行!」
「課長代行!」
い、忙しすぎる。
なんだ領収書にサインって。課長の仕事か!?
課長の各方面での活躍が垣間見えた一日だった。
ちなみに、多部さまは後日、帝国の宰相まで上り詰め、明日香のボーナスになる。
もちろんこのときの明日香に想像はつかないし、それどころではない。
今日は飲みに行く気力もなさそうだ。
続く
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