第22話 毒殺

あー、頭が痛い。

昨日飲みすぎたっけ?


「あ、おはようございます。明日香さん。今日も一日頑張りましょうね。」


伊藤くんはイケメンスマイルを発して去っていった。


そう、問題はコイツだ。

昨日、伊藤くんに告白された。まるで高校生とかの青春みたいに真っ直ぐストレートに。


まじかよ。

アタシそんなイイ女じゃねえぞ?

伊藤くん、見る目ねえなぁ。



「ここは、どこですか?」


「ようこそ、異世界転生課です。お望みとあらばどんな世界にだって転生させちゃいます!さあ、貴方様のご要望はどんな世界ですか?」


「遅れましたー、調書です」


伊藤くんが調書を差し入れてくる。去り際のウインクはやりすぎだ。


「…佐伯かずえさん、貴女はこの度、お亡くなりになり、異世界へ転生する運びとなりました。」

「え…うそ。私ただの主婦よ?夫の帰りを21時まで待ってて…それで…あれ?」

「はい。急に倒れて病院に運ばれて、そのまま息を吹き返さなかったようです。」

「そんな…」

「犯人は旦那さまです。」

「どういうこと?」

「あなたは旦那さまの策略で、毒薬を飲まされ、お亡くなりに。旦那様は自首して、数日後に初公判だそうですよ。」

「なんで、私のことを殺したの?」

「どうやら愛人がいたようで、、、。あなたが邪魔になった…というような供述をしています。」

「許せない!私がどれだけ毎日毎日、我慢してきたと思ってるの!?」

「お気持ちお察しいたします。」

「察せるわけないでしょ!呪ってやる!化けてでてやるんだから!」

「それはご勘弁ください。幽霊も悪霊も廃れた文化です。」

「じゃあ、私はどうしたらいいのよ…。」


涙を流し嗚咽するかずえさん。


「貴女には新たな生が約束されています。これまでのことは忘れ、楽しく生きてはいかがでしょうか。」

「…そうね。死んじゃったんですもの。新たな生に期待するしかないわね。」

「どんな世界に行きたいですか?」

「こんどは南国みたいなとこで悠々自適に暮らしたいわ。そう、自由に生きたい」

「かしこまりました。それでは貴女さまの転生先は「ギルドレス」。南国のような島国が多く点在し、平和にくらしている世界です。あなたはこれまでの記憶をすべて無くし、そこで新たな生を謳歌してください。ついてくるスキルは【サバイバル】【言語理解】【無限収納】です。」

「ありがとう。きっといい人生にしてみせるわ。」


かずえさんは、波の音とともに消えていった。



ん?調書と一緒にメモ書き用紙が…。


明日香さん、今日、一緒に飲みに行きませんか?    伊藤


もう!仕事中になにしてるんだあの子は~!

いかん、これはいかんぞ。

一緒に飲みに行ったら、それこそ既成事実になってしまう!

居酒屋の店員は全員、私のことを知っている。

飲みに行く相手が楓でも卯月でもなかったら。。。

なんて言われるんだ!

翌日には全所員が知ることになるだろう。

ついに如月明日香、彼氏ができる!…ふぁあ、彼氏かあ


よし、先輩である私が後輩を指導する名目で飲みに行けばいいんだな?

これなら誰もなにも言わないよな?

課長に突っ込まれても、指導ですって言えるもんな!


というわけで、明日香は本日、伊藤くんと飲みに行くことにした。



続く




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