第15話 The End of the Fight
教頭先生だったモノが一歩踏み込んで腕を突き出してくる。それを見越していたかの如く赤宙が顔色一つ変えずにバリアを展開する。その瞬間に敵の手の平から数センチ先の空間が歪んでいく。その歪みは赤宙のバリアによって遮断されそのまま何事もなかったかのように歪みは無くなる。
流石というべきだ。赤宙のバリアが無ければ今頃俺の体は歪んでいただろう。しかし、この一瞬を逃すわけにはいかない。急いで敵の後ろに回り込む。
「翔太君、今の一回の攻撃だけでわかったはずだよ。君という一人の地球人と私とでは絶望的なまでに超えられない差があると。まだ遅くない、私に例のアレを渡すんだ。そうすれば命だけは助けよう」
「殺そうとしてきたやつを信じるとでも本気で思っているのか?悪いが、信じられるのは後ろにいる相棒だけなんでな」
後ろでバリアを張ってくれた宇宙人を見る。一秒にも満たな一瞬だったが確かにその目が頷いていた。
秘密兵器を起動させるのに7秒がかかる。普段は7秒など一瞬で過ぎ去さるが、命が掛かったこの場では1秒すらもとても長く感じる。その間も敵の瞳は俺を捉えて離さない。まるで隙がない。
「仕方ない。私個人としては翔太君を殺したくはないんだが、本当に仕方ない」
あと5秒。
仕方がないと言いながらも銃口を向けるように腕の先を俺に向ける。
残りは4秒だ。
その伸ばされた右手の先に穴が空くのではないかというほどにそれを凝視する。その手の先の景色が少しの違和感に揺れる瞬間を見逃さない。強く地面を蹴り上げる。横目で見た俺がいたその場所は歪んで見えた。
この時点で残りは3秒。
少しでもかすっただけで致命傷になることが容易に想像できる。異常なまでの集中力のおかげか極度の緊張のなせる技なのか一秒過ぎ去るのが呆れるほど遠い。
あと2秒。
避けるので精一杯でヤツの腕に注意を向けることができていなかった。先ほどとは逆の左手が既に構えられていた。必死に足を動かす。動け。動け。足にあった地面の間隔が無くなる。そして強い衝撃。衝撃?どうやら足が出ずその場で前のめりに倒れたらしい。幸いなことに倒れたおかげで左手の攻撃は間一髪で当たらなかった。
最後の一秒。
倒れてしまったので次の攻撃を避ける術がない。何も出来ない俺は教頭先生だったモノの目をしっかりと見つめた。
そして0になる。
「赤宙―!ぶっち、か、ま、せー!」
圧縮された光りという光りが一直線の道となる。あまりの光量に視界が白一色になり敵の姿を消し去った。跡形もなくなんてものではなく、存在自体が初めから無かったようだった。
そして戦いは終わった。
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