第14話 Decisive Battle
屋上の空はついさっき起きた爆発など意に介さないように透き通るほどの快晴だった。
「やったのか?」
「うん、十分な手応えはあった。相手も宇宙人とは言え私の全力をまともに受けたんだ。無事ではすまないよ」
赤宙が俺に成りすますことで、敵の宇宙人を迎撃するという作戦は敵を木端微塵にすることにより達成された。
「これで無事でいられたらもうどうしようもねぇな。しかし、あいつの姿はおろか死体すら見当たらないな」
「完全に消滅したのかもしれない。私もこの技をノーガードの敵に使ったことがなかったから正確にはわからないけど」
「消滅したってやばいな。これで敵の脅威は消えたのか?」
「残念ながらそうではないわ。一時的には消えたでしょうけど、敵がさっきのやつだけとは限らないわ。例の宇宙人を確保するまでは油断しないに越したことはないってこと」
「まぁ、そうだよな」
今回は前田の力を借りることで結果的に敵をおびき出し倒すことができた。しかし、次も上手くいく保障はない。むしろ、赤宙が他のモノに擬態できることが敵に知られたことで動きにくくなったかもしれない。次は同じ手は通じないだろう。
「それで、例の宇宙人に関して何か気づいたことはない?」
「それに関してなんだが実は一つだけ心当たりがあって」
俺が赤宙に伝えようとしたとき、二人以外居ないはずのこの屋上に三人目の人物が入ってきた。
「それは本当なんだろうね、翔太君」
そこに居たのは先ほど跡形もなく消し飛んだはずの教頭先生の姿だった。
「何故この場所に居るのかって顔をしているね。特別に教えてあげよう。私は知っての通り地球人ではない。だからその程度では私を殺すことはできないよ。さっき君たちが消し飛ばしたのは紛れもなく私自身だ。そして私の身体の一部だ。私はね、身体の一部を切り離すことができるんだよ」
「つまり、赤宙が倒したのはお前の身体の一部で、本体であるお前はノーダメージだっていうのか?」
「翔太君は察しがいいね。そういうことだよ」
相手が地球人ではない以上、どんな動きをしてくるか全く分からない。そのための不意打ち攻撃だったのに。それが完全に不発に終わってしまっただけでなく、赤宙の技を見られてしまった。一回で対応してくるとは思えないがやりづらくなったことは確かだろう。
「やるしかないか」
「どうしたのかな?やるって何をだい?」
「おい、あれ使うぞ」
隣で両腕を構えファイティングポーズを取っている赤宙に声を掛ける。
「わかった。それじゃあ、一旦あいつは私が引き受けるわ。でもあれは一回切りだから外さないようにしっかりね」
「おう、任せろ」
教頭先生だったモノに視線を合わせる。
「おや?作戦会議はもういいのかい?もっと話し込んでもいいんだよ」
「いらない心遣い感謝するぜ。一撃だ」
「なにかね?」
「お前を次の一撃で倒すって言ったんだ」
敵の気配が変わったのが空気から伝わってくる。しかし、ここで引くわけにはいかない。
「それは楽しみだよ。翔太君」
「いくぜ、赤宙」
決戦の火蓋が今切って落とされた。
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