第11話 Martial Arts

 未来の体の周りに張られたバリアは俺の心配が杞憂であったと証明するかのように、宇宙犬フヘンダフードの攻撃を一切通さない。


「すげえな、このバリア。宇宙犬が嚙みつくことはできないし、体当たりしてもびくともしないな。この質量がぶつかってきたら普通木端微塵だぞ」


急に襲ってきた宇宙からきた犬フヘンダフードは大きさが優に10メートルはあり、小さな家なら簡単に崩せるだろう体当たりをしてくる。体当たりと言えば聞こえはいいが、実際には10メートルもある塊がただただこっちに向かって追突してくる。人の体など、ぐしゃっと卵のように潰れること間違いなし。


「守ってばっかりはいられないから、そろそろ攻めるわよ」



「ムーブメント!」


その瞬間、未来の全身を包んでいたバリアが一瞬で両手だけを包む形になった。バリアを纏った拳を固く握りしめる。


「宇宙格闘術ラクトスポルト“爆縮”!」


空間が縮んで爆ぜた。本当に一瞬の出来事だった。景色が一瞬ほんの一瞬だが縮んで歪む。と思ったのも束の間、白い光が視界を覆う。この一連の出来事がわずか2秒ほどで起きたのだ。


「うぉお、なんだこれ!熱い熱い!熱波がめっちゃ来てるから!」


襲ってきた宇宙犬の頭は飛び散り無惨な姿となっていた。首無しの宇宙犬はそのまま音もなく倒れ、ゆっくりと透明化して跡形もなく消えた。


「え、消えたぞ。倒したのか?」


「そうね、もう危機は去ったわ。さあ秘密兵器を取りに行くわよ」


何事もなかったかのようにこの宇宙人は淡々としているが俺にはなにが起きたのかさっぱり理解できず、冷静になれない。

「どうやったんだよ。これもバリアの能力か?」


「違うわ。バリアはあくまで防御するだけ。さっきのは宇宙格闘術のラクトスポルトの技のひとつ。爆縮よ。空間を無理やり縮めてそれが戻る力で爆発を生み出す技。私こう見えても武闘派なの」


未来がこんなにも闘えるとは知らなかった。これなら俺の護衛はばっちりだろう。


「その宇宙格闘術ってのは俺も使えたりするのか?」


「んー。そうね。地球人である君が使えないこともないけど、技をひとつ繰り出すのに腕や足が飛ぶだろうから4回だけなら使えなくもないけど」


「遠慮しておきます」


それにしても今回の襲撃は妙だ。俺が世界を揺るがす宇宙人を探す手がかりだと他の宇宙人も気付き始めたのだろうか。


「俺が襲われたのはやっぱり、宇宙人が関係してるんだよな。俺が例の粒子を発していることに他の宇宙人が気付いたってことだよな?」


「確かに今回のようなことが全くの偶然で起こるとは考えにくいから、そういうことでしょうね。君が狙われ始めたということは宇宙が終わりに少し近づいたということ。いよいよ急がないといけないわ」


「そうだよな。それなら俺に良い考えがある。お前がこれだけ闘えるならきっといけるはずだ。今度はこっちから仕掛けてやろうぜ!」


次に取るべき行動を決めたら行動するのみだ。まずは未来の言う秘密兵器とやらを回収するため早足で宇宙船までの道を急ぐのだった。

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